ブラザーに愛をこめて
07
「お前、こんだけ言ってもまだわかんないのかよっ!」
「…っ、な、なにがだよ?」
「がぁぁ、もうっ!だからお前は鈍いっつーんだよ!」
「なんなんだよ、みんなして鈍い鈍いってよ!そんなの言わなきゃわかんねぇし!つーか俺の何が鈍いっつーんだよ!」
「…っ、」
鈍いって、意味わかんねぇし。
それに俺みんなになんか悪いことでもしたかよ!
俺は口調を強くしそう言うと、兄貴は罰が悪そうな顔をしながら目を静かに逸らした。
「兄貴っ!俺の何が鈍いかって聞いてるんだけど!」
「……」
「兄貴ってば!」
「…っ、うるさいんだよ!お前には関係ない!!」
「なっ…、意味わかんねぇっ!」
そう声を上げるや否や、なぜか物言いたげな顔をしていた兄貴だったけど、そんな兄貴を無視して部屋に戻った。
なんかそういう態度って、傷つくまではいかないけどはっきり言ってくれないのがムカつく。
それでいて、勝手に鈍い扱いされるなんて理不尽すぎるじゃん。
それともこの期に及んで、まだ俺を嫌いだとアピールするつもりだったのかも。
「……」
アイツだったら考えられる!
だけど、
「――それ違うから!」
「は?」
次の日、その事を話した龍にきっぱりと否定された。
それどころか、あの奈緒までもが兄貴を庇っていた。
みんなどこか必死だった。
そしたらいつの間にか兄貴の良いところ探し大会みたいなのが始まってしまった。
本当は兄貴の事なんてどうでも良いんだけど、みんなすごく楽しそうだったから仕方なく付き合うことにした。
しかしまぁ、お昼休みになんて遊びを思いつくんだろうと、内心は溜息を付いていた俺。
だって俺には、兄貴の良いところがわからないから…
「…っ!」
(…‥え?)
今、みんなが話しをしてる最中に兄貴が俺を見ていた気がした。
胡座をかき、手には箸を持ちながら頬杖をついて常に俺に視線を向けていた。
俺と目を合わせたら逸らすだろうと思ったのに、それでも尚、舐め回すように見つめてくる。
それは、時間がいくら経っても変わらなかった。
「‥っ、」
その視線が怖くて、俺の方が目を逸らしてしまった。
そして逸らした俺を見て、兄貴がニヤリと笑っていた事を俺は知らなかった。
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