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ブラザーに愛をこめて
06



「兄貴、帰ってたのか?」

「あぁ」

学校から帰ってくるなり、ノドが渇いたのでキッチンに直行すると、リビングでは兄貴がクーラーの部屋で優雅にテレビを見ていた。
俺のドアの開く音に気付いた兄貴も、素早くこっちを見て返事をしてきた。

「があぁ、あっち〜!ジュースジュース、っと!」

「…‥」


兄貴は最近帰りが早くなった。

まぁ、正確に言うと、母さんが単身赴任中の父さんの所に行ったあたりからだ。
アイツ、母親にでもなったつもりでいるのかねぇ??

「……」

今ちょっとムカッときた。
意味はないんだけど。


「翔太」

「は?」

自分の考えていた事になんとなくムカッとしていると、兄貴が突然俺を呼んできた。
すぐに意識を戻し、俺が兄貴に視線を向けると、兄貴の方は視線をテレビに向けたまま続けた。
自分から声をかけてきたクセに随分とふてぶてしい態度だ。

「お前さー、今好きなやつとかいるわけ?」

「…、ぶはっ!」

くそぉ、飲んでいたジュースを思いっきり噴き出した。
しかも鼻にも入った。
だって、兄貴が突然わけのわかんないことを言ったから!


「きったねえな」

「てめぇのせいだろっ!お、おまっ…、何でいきなりそんな事聞くんだよ!?」

「聞きたいから」

「はぁ?」

また兄貴がおかしくなった。

ついこないだ、俺をおぶって帰った時にも突然思い出話しとか始めたし、急に優しそうに笑いかけてきたし、絶対おかしいと思った。
けど、今日お昼を一緒に食った時はまたいつもの兄貴に戻っていたから安心してたのに。

まぁ、今になって考えてみれば、もう少し前から様子がヘンな所もあったような気がするけど。

「――で、いるのか?」

「っ、べ、別に、いねぇけど…!つか、いたとしたって、絶対兄貴になんか教えねぇよ!」

「……」

「それに、兄貴に教える義務なんて別にねぇだろっ!」

「俺にはある!」

「は?」

まだだ。やっぱり兄貴のわけわかんないモードのスイッチが入ったままらしい。
ていうか、なんで俺に好きな人が出来る出来ないを、兄貴が聞く権利あるんだよ!全くもっててめぇにそんな権利はございません!

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