ブラザーに愛をこめて
05
「はぁー!?なんで倉橋が大学の校舎にいるんだよ!」
「さぁ?俺に言われてもなぁ…あ!そういえば彼女がいるとかなんとか‥」
戻ってくるのが遅かった理由を龍に問い詰められた俺は、さっきの倉橋クンとの出来事を話した。だけど龍は心底嫌そうな顔をしていた。
そういえば、龍は倉橋クンにあまり好意を持っていないんだ!
「彼女ーー!?あんな奴にいるわけないじゃんか!」
ほらな?
「あんな奴が女子に好かれるなんて女子の品格を疑うね!」
「…りゅ、龍くん?なんか倉橋クンの事、相当お嫌いのようですけど‥??」
「あー嫌いだね!!お前は人の彼女を取るような奴と仲良くしたいと思うか!?」
「…へ?」
「彼氏がいるとわかっててわざと彼女を口説くような奴と仲良くできるかって聞いてるの!」
「……」
え?ちょっと待てよ?!
それって彼女彼氏の間柄の人に割り込んで邪魔をするって事?
……あ!
「龍、お前もしかして倉橋クンが嫌いなのって、お前が言ってた愛子さんの浮気相手が倉橋クンだからか!?」
龍は体育倉庫に閉じ込められた時、愛子さんが浮気をしてるかもと不安になっていた──
「そうなのか?龍…」
「…‥正確には‥そうだと思い込んじゃったんだ!」
──だけど龍の話しによれば、腹痛で学校を休んだ日の夕方頃に病院に行った帰り道、たまたま愛子さんと自分のクラスメートの倉橋クンが、密着しながら話しをしてたのを目撃した事から始まったらしい。
けど、その話しにはもう決着は付けているらしい…
「──というわけで多少私情は挟んでるけど、アイツのあの軽いノリが嫌いなわけ!」
「…つーかさぁ龍。うちの兄貴と大して変わんないじゃん!」
「…っ、れ、怜治さんは良いんだよっ!!」
「はぁ?」
倉橋クンはダメでも兄貴の女たらしは良いってどういう事なんだよっ!?
あぁ、あれか?親友の俺の兄貴だからそこは目を瞑ってくれてるって事か!?
りゅ、龍…お前ってやつは!!
「…‥っ」
「…はぁ。翔太さー、目にうっすら涙を浮かべて嬉しそうにしてるみたいだけど、お前絶対にわかってないだろう??」
「分かるよぉ!親友のお前のことならなんだってぇぇ〜!」
「……」
わかっていない翔太。
怜治の女たらしは、翔太に気持ちを隠すためのカムフラージュだって事を。
それが分かりすぎて、またしても怜治が気の毒で仕方ない龍だった。
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