ブラザーに愛をこめて
03
「翔太、英語の訳終わった?」
「え?うん、まぁ…」
食べ終わって一息つくと、龍が満腹の腹をさすりながら授業の話しに触れてきた。正直休み時間くらいは授業の事を忘れたいもんだ。
と思いつつも取りあえず自分の進行状態を言うと、どこから持ってきたのか龍はノートと教科書を出し始めた。
うわぁ、イヤな予感がする。
「翔太くぅーん!見せて?」
「断る!」
やっぱり俺の思案した通りだ。課題が終わったあとにおねだりするのはコイツのオハコ。
龍の成績は友達の俺が言うのもなんだが、滅茶苦茶最悪だ。
中間期末共々に、100点なんか当たり前。――あ、ちなみに5科目で100点という意味だ。
だからテスト1週間前になると俺のスパルタ補習が始まる。
「テスト1週間前じゃないのに翔太厳しいなぁ」
「当たり前だっ!俺、この前お前の担任に呼び出されて、龍は課題は満点なのにどうしてテストは出来ないんだ、って疑われたんだぞ!?」
「あはははは!そっかぁ!翔太に見せてもらってるのがバレちゃったのか?」
「……」
取りあえず自覚はあるんだ。
それって、余計質が悪いよ。
けっ!今度愛子さんに告げ口してやろうっと。
――ん?あれ?
そういえば…。
俺はそうやって思考を巡らせていると、違和感を感じ始めた。
だって、龍も千里さんも、兄貴と愛子さんに普通に話してることに今更ながら気付いたからだ。
ていうか、いつのまに仲直りしていたんだ?
まぁ龍はケンカしていたわけじゃないんだけど浮気をされた‥とかなんとか言っていたから。
「……」
横ではまだバカ笑いする龍。
向こうの方では兄貴も交えて楽しそうに話す千里さん。
ま、良いんだけどね。
「よっこいしょっと…」
「ん?翔太どこ行くの?」
「便所」
「きゃぁぁー翔太ったら便所なんてお下品なんだからぁん!」
「……」
一生やってろ、アホ!
龍はキャピ!と女の子のように振る舞ってくる。気持ちが悪いので俺は素通りした。
愛子さん‥めちゃくちゃ笑ってるみたいですけどソレあなたの彼氏ですよ?良いんですか?
「あははは!龍くん可愛い」
良いみたいですね…。
このバカップルは、当分はイチャイチャしてるだろうと思った俺は眉をピクピクさせながら、やっと素通りをすることができた。
しかし、
「おい、どこ行く?」
「……」
今度は兄貴が聞いてきた。
ったく、なんでトイレ行くぐらいでこんな面倒な思いをしなきゃいけないんだ!
俺が強い口調で「便所だ!」と言うと兄貴は「ふん」と鼻をならし俺から離れた。
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