ブラザーに愛をこめて
02
「いてててぇ…」
俺って、叩かれてばっかり‥
誰も労ってもくれないから、自分で自分の頭をさすって叩かれた頭を1人で慰めていると、
「翔太君…平気?」
「…っ!!」
息が詰まりそうになった。
だって目の前にいたのは元彼女の奈緒だったんだから。
「奈緒…っ、先輩!」
「ふふふ。やだぁ翔太君!奈緒のままで良いよ?」
「…で、でも‥武藤先輩が」
「…え?あー、俺?俺はそんな事気にしないよ!」
「…‥」
優しいというより…武藤先輩ってかなりノリが良い。
決して悪い意味じゃなくて、少なくとも優等生ってイメージから少しかけ離れたタイプの人だと思った。
だけど気がつくと武藤先輩は俺をマジマジと見てきたのだ。
「…‥んー」
「あ…あのぉー‥何ですか?」
「うん。翔太くんってさー、怜治先輩に似てないよね?」
「…っ、」
え、今さら!?この人って‥
…まぁ俺たちは兄弟だけど、似てると言われたことはほとんどないに等しい。
それぞれ父親似の兄貴と母親似の俺だしね。
「それ、よく言われます」
「やっぱり?!怜治先輩が格好いい系だとすれば、翔太くんは可愛い系だね」
「は、はぁ…」
そう言うと、武藤先輩は俺の頭をガシガシと撫でてきた。奈緒を前にそんな事をされるとさすがに恥ずかしいんスけど、奈緒も可笑しそうにそれを黙って見ていた。
絶対に奈緒の顔見れない。
「――おいっ!」
「っ、兄貴っ!」
「翔太っ!まだ食い終わってないのにウロウロすんな!」
「…‥」
うわぁ、機嫌わりー。
俺が武藤先輩に頭を撫でられていると横から兄貴が来て、撫でていた武藤先輩の手を振り払った。
「司!お前たちもだよ!」
「あぁ、はいはい。…ったく、怜治先輩は本当にヤキモチ妬きなんだからぁー」
「うるせっ!‥って言うか、翔太も他の奴にウロウロしてんじゃねぇよ!俺の身にもなれ!」
「…はぁ?」
なんなんだ?
俺はただ、武藤先輩と楽しく?話しをしていただけだと言うのに。しかも、人をまるでさまよってる人みたいにウロウロ、だなんて失敬な奴だっ。
そんなにカリカリしていると、そのご自慢のサラサラヘアーがいつか禿げるぞ。
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