ブラザーに愛をこめて
01
「…あ、あのぉー‥?」
「ん?なにかな?翔太クン?」
「いや。別に…」
「そう!」
遡ること数分前───
昼休み。龍に連れられ来たのは大学の校舎だった。
愛子さんに会うのかと思いきや、待っていると出てきたのは大学生オールスターズだった。
愛子さんに長谷川さんに千里さんに兄貴。ついでのおまけに、奈緒と武藤先輩カップルまで居やがった。
みんなは大学の裏庭に着くと、なんの躊躇もなく突然お弁当を広げ始めたのだ。
「ちょ、ちょっと龍!これ、なんだよ?!」
「え?なにって…弁当というものだけど‥?」
「(…ガク!)って…そーじゃなくって、何で俺たちがここで飯食うんだよ!?」
「愛ちゃんがいるから!」
「…っ、龍ーー!!…ぐぇ!」
「…翔太。黙って食え!」
「…いってぇ…っ、兄貴!!」
ノロケる龍に、俺が飛びかかると後ろから襟を強く引っ張られた。犯人は兄貴だ。
兄貴は溜息をつきながら、もう片方の手で器用に黙々とお弁当を食っていた。
「だ、だいたい、何で兄貴がここにいるんだよ?!」
「俺は長谷川と千里で飯を食ってるんだよ。悪いか!」
「あー!悪い悪い!俺の楽しみはな、唯一学校に居るときだけ、てめぇに会わないことなんだよ!それがお昼も一緒なんて冗談じゃねぇよ!バーーーカ」
「……」
「それに!兄貴はいっつも口うるさ─(スパーーーン!!)っ、うぐっ!!」
突っかかってくる兄貴に、悪態をついていると龍が俺の頭に目掛けて、カバンで殴ってきた。
まだ兄貴に、言いかけていたから舌を噛んだ。
「……龍。サンキュー」
「いえいえ。これくらいお安い御用ですよ、怜治さん!」
「…てぇ…いててぇ!おい龍!いきなり何するんだよ!!」
──スパーーン!!
「…いでっ!なんでお前が叩くんだよ‥龍」
「いや、なんとなく」
「っ、なんとなくで叩く─(スパーーン!)っ、いでぇ!」
「わりぃな。手がすべった」
「…って、千里さんまでなんで叩くんですか!?」
「いや、なんとなく」
「……」
ちくしょう‥いてぇな!!
一体、お前らは俺に何の恨みがあるというんだっ!?
龍だけだと思ったら、今度は後ろから千里さんにまでカバンで叩かれた。
俺はあまりの痛さに、目に涙を溜めて潤んでしまった。
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