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「あれ、あそこに居んの…」


夜、メンバーで飯でも食ってから帰るかとなって近くのファミレスに向かっていたら、ふと秀ちゃんが何かに気付き声をあげた。



指をさした方を見るが俺にはよく見えない。



「あ、名前をどうぞじゃん」

「だよな」



チャマと秀ちゃんがそう言うからメガネをつけてもう一度見れば、たしかにそこに居るのは名前をどうぞだ。

あと…知らない男。



「え、もしかしてあれが今日見合いした人物!?」

「あーそうなのかな?」



キャー、とヒロとチャマがはしゃぐ。

だけどあんまり俺ははしゃげなかった。

なんか…


初めてアイツが彼氏つくって、それを実際に目撃しちゃった時のあのモヤモヤする感覚がする。

成長してねーな、俺。



「あれ、もう別れちゃったぞ」

「よし、行ってみよう!」


頭を下げ手を振り別れた様子の二人。

一人歩きはじめた名前をどうぞを、気づかれない様にとこそこそしながらチャマとヒロが追いかけていった。


楽しそうだなぁアイツら。




少し遅れて俺と秀ちゃんもあとを追う。





「かーのじょ、何やってんの?」

「俺らとあしょ、…あそばなーい?」


ナンパ風に声をかける二人。


『ヒロ、台無しっ』

一瞬びっくりしていた様子の名前をどうぞだったが、二人だと気づくなり我慢していたように吹き出した。

まあたしかに台無しだわ、俺も秀ちゃんもおもわず笑っちまった。だってヒロ…大事なとこで噛んだぜ。



「よっ」

『あれ、基くんと秀ちゃんもいたんだ?皆で何やってんのー』


後ろから近づいて声をかければ、秀ちゃんが言っていたように普段よりお洒落した名前をどうぞがニッコリと笑う。

なんだよいつにも増して眩しいな。…いや、別にクサイ事言いたいんじゃねーよ?
なんつーか…他に表現できない。



「もう帰るとこ?なら一緒に外で飯食ってから帰らない?俺ら今から食いに行くんだけど」

『あ、行く行くー!』


ニコニコし合う直井兄妹に少し癒される。可愛いなコイツら。





「見合いは?どうだった?」


横に並んだ名前をどうぞに尋ねれば、苦笑いが返ってきた。

『んー…なんともいえない感じ』


どんな感じだったんだよ。




「さっきいた人って…見合いした人?」

『うん…え?見てたの?』

「ん、ちょっとだけ」

『そっか。…なーんか気ィつかってたら疲れちゃったよぉ』



何食べたか全然覚えてないの、と笑う。

お洒落して、食事して…見合いっつーかデートみたいなもんだよな。


「……」

『…?どーかした?』

「え?いや」


なんでもねーよ、と覗きこんできた顔をペシンと軽く叩けば名前をどうぞからは不満の声があがった。


『痛いですー』

「あぁそう?撫で撫でしてやろーか」

『しなくていいー』

「遠慮すんなって、おーよちよち大丈夫でちゅかー?」

『や、頭じゃないしーっ』


グリグリとわざと強く頭を撫で回せば、うぇーっと間抜けな声がする。

いつもより着飾ってるがやっぱり名前をどうぞは名前をどうぞだなと少し安心した。






「ねえ名前をどうぞ、見合いした人とはもう会わないんだよね?」

『え?』


チャマの気になる問いかけに、俺にぐちゃぐちゃにされた頭を手グシでなおす名前をどうぞの言葉を黙って待つ。

まあそうだよな、見合いだって仕方なくしたわけだしなぁ。



『あー…それがね、また会う事になっちゃったの』

「ええ!?なんで!?」


断れなくて……と困ったように笑う。


『思いの外おしの強い人で…一度は断ったんだけど、負けちゃった』

「もー、それお前の悪いクセだぞ?それともさっきの人と付き合うの?」

『いや…そのつもりはない、うん』


どーしよう…、とチャマの袖を掴み断りきれなかった自分に後悔している姿が不謹慎だが可愛い。

…て、違ェ。いや、違くはないんだけど可愛いんだけど…

え、また会うの?あの男と?




「いっその事チャマが彼氏のフリして会えばいいんじゃね?」

「お、それいいね」

「諦めつくかもな」

名案だとばかりにヒロのなにげない言葉にチャマも秀ちゃんも頷く。
だけど、名前をどうぞは駄目だわーとその案をすぐに却下した。




『双子なんですーって話の流れで写メ見せちゃったから…』

「マジかー…。あ、じゃあこの中の誰かに頼むとか」

『えーそれは皆に悪いよ。次会った時もう一回ちゃんと断って、』

「…俺、彼氏役するよ」


黙って流れをみていた俺の急な立候補に、名前をどうぞが驚いた顔をする。

チャマ達も若干驚いた顔をしている。


『…いや、悪いからいいよ。そんな事させられないし。そもそもバンプのメンバーを彼氏として紹介なんかできな、』
「じゃあまた断りきれなかったらどーすんの」

『それは…』


少しイラついた口調で言ったせいか、名前をどうぞが困ったように眉を下げた。




「怒ってるわけじゃねーよ。困ってるなら協力するから遠慮なんてすんなって事」

『ん、…ありがとう。…でもなぁ…』



バンプのメンバーだからなのか幼馴染みだからなのかわからないけど、彼氏のフリをさせるのが抵抗あるのかしばらく名前をどうぞは唸っていた。




フリでもいいから



「(本当はフリじゃなくてちゃんと彼氏になりたいけどな)」


「(やっぱり…藤くんて好きなんじゃない?)」

「(えー、マジで?でも前から藤くん名前をどうぞにはちょー甘いじゃん)」

「(たしかに。昔からこんなだよねえ…)」





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