おまえ、寝相悪すぎ。 朝7時。 梓はいつものように自分の部屋の窓を開けて、たった20センチの隙間を挟んだお隣さんの部屋へ。 ベッドで気持ち良さそうに眠るのは梓の幼なじみの、獏良 了。 彼を起こすことは梓の日課だ。 「了くん、朝だよ。起きて!」 了くん!了くん!と続けて呼ぶと重たい瞼が少しだけ開いた。片目をゴシゴシとこすると梓をゆっくりと視界に入れる。 「んー…おはよう。梓ちゃん。」 「うん。おはよう。」 起きたらまずはじめに朝の挨拶。 そして次に、 「今日もありがとう。」 「どう致しまして。」 笑って感謝を伝える。 こうしてこの幼なじみの朝が始まる訳だが、 「そーいえば梓ちゃん。バクラは?」 「まだ、…起こしてない。」 「…じゃあ、一緒に行こ!!」 こうして梓はいつも通り了に手を引かれてもう1人の幼なじみ、了の弟であるバクラを起こしに行くことになる。 「と、思ったけどボク猛烈にトイレ行きたいから梓ちゃん1人で起こしてきて。」 「えっ!また!?」 「うん、また。だからヨロシク!!」 何でいつも私だけ…? とツッコミたい梓だったが了は軽い足取りでトタトタと自分の部屋に戻ってしまう。(そこ、トイレじゃない!!) はぁ、と小さくため息をつくとバクラの部屋を軽くノックした。三回程繰り返してみるが反応はない。覚悟を決めてノブを回した。 部屋に入ってベッドを見ると今にも床にずり落ちてしまいそうなバクラの姿。(お腹も出してる。相変わらず寝相悪いなぁ。) 梓は小さく笑ってから深呼吸し、おそるおそるバクラに声をかけた。 「バ、バクラくん。朝!朝だよ!」 「…あァ?………。」 瞼が開かれてまだ眠たそうな目に見つめられること3秒。 パッと完全に目が見開かれる。 来るっ! 梓はギュッと目をつむって次に放たれるであろう怒鳴り声に備えた。 「起こしに来んなっつっただろうが!!」 「だって…りょ、了くんが…。」 「また宿主か…チッ。早く出ろ!」 「う…、バ、バクラくんのバカ!!」 何だと!?とバクラが食ってかかるよりも速く梓はバクラの部屋を勢いよく出ていく。了はその様子を隣の部屋で聞き耳を立て伺っていた。(またかぁ…、相変わらず進展無いなぁ。) 苦笑いをして直ぐにこの部屋に飛び込んで来るだろう幼なじみを待つ。 「了くん!」 「バクラのこと、起こしてくれた?」 「うん…でもさ、また」 怒られちゃった。と悲しそうに笑う梓の頭を優しく撫でる。(この子のこういう顔はあんまり見たく無いんだよなぁ。) すると廊下からドンドンと大きな足音が響いてきた。 「アイツが来るみたい。梓ちゃんは部屋に戻ってて。」 「う、ん。ごめんね。」 「謝らないで。また後でね!」 「…うん!」 梓が部屋に戻って窓を閉めるのと同時にバクラが力強くドアを開いた。 「宿主ィ!!」 「もー、うるさい。梓ちゃん怖がって逃げちゃったじゃん。」 「いつもいつもオレ様の部屋に入れる宿主が悪ぃんだろうが!」 怒鳴り散らすバクラを冷たい目でみる了はゆっくりと口を開く。 「…嫌われるよ?」 「う…、うるせぇ。」 「うろたえすぎー!!」 「宿主っ!!」 「てゆうかさー、」 おまえ、寝相悪すぎ。 (今日が一番酷かった、うん。) (何で知ってんだよ!) (見えたから。) (壁に穴が開いてるのはボクがキミたちを見守る為だからさ。) (あのなぁ…) 2008.12.14 [次へ#] |