小ネタ
言い訳無用(83/大学パロ)
「送信、完了ですね……」
携帯を握りしめたまま、八戒はゆっくりと息を吐いた。
彼が打っていたのは、とあるクラスメイトへのメールである。
『渡したいものがあるので、明日クラコン前に早めに来てもらえませんか?まぁ集合時間まだ決まってませんけど。』
これが女子当てならば、客観的に見て微笑ましいものになるかもしれない。
しかしこれは、あくまでクラスの男子当て。
その上「渡したいもの」はバレンタイン用に作ったケーキなのだから、端から見れば茶番でしかない。
しかし、本人は大真面目である。
何度も文章を読み返し、何度も送信ボタンを押すのを躊躇して。先程、漸く連絡することが出来た。
後は相手がどう出るか……
〜♪
「!?」
予想外に早く、返信が来た。
慌てて携帯を開く。
『了解。具体的な時間が決まったらまた連絡くれ。』
「……そう、来ましたか。」
本当は、色々な想定の下返信を用意していた。
『渡したいものって何だ?』と問われたら、『実験で世話になったお礼のケーキです。』。『何故クラコン前?』と問われたら、『全員分作ってないんで、みんなの前で渡すの気まずいんですよ。』。
しかし、実際の返信はこれである。
「どうしましょうかねぇ。」
何の言い訳も出来ないまま、二人きりで会うなんて。
うっかり口を滑らせそうで恐ろしい。
一度落ち着くため、大きく深呼吸してみた。
「……腹を、くくりますか。」
少しでも自分に好意を持って欲しかった故に作ったそれを、じっと見つめる。
バレンタイン当日に渡すのは告白と同義。何故だかそれでは相手に負ける気がして、こんな日までうだうだと悩んでしまったから。
もう後戻りはしたくない。
「待っていて下さいね。」
そう呟きふっと笑って、八戒は待ち合わせ場所を考えるため地図を広げだした。
運命の待ち合わせまで、あと1日。
【END】
* * *
8って色んな言い訳手段持ってそうな気がする。絶対慎重派。
でも3に肩透かしくらって目をパチパチさせてたら萌える、というお話(…)
2010/2/21 季茶
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