心情裏表[DRRR!!/イザ→シズ]
俺は、人間が好きだ。
「待ちやがれっ!」
「はは、待つわけないじゃん。相変わらず頭悪いなぁ、シズちゃんは。」
ただし、コイツを除いては。
「んだとっ!」
「いい加減諦めてくれれば良いんだけど、ねっ!」
最もコイツは、俺の愛すべき人間としてカテゴライズするには不都合が多すぎる。
所謂「常識」というものが通じない男──なんて一言で片付け得るレベルではない。
自販機は投げるものではないし、標識は引っこ抜くものでも振り回すものでもない。そんな「常識以前」のことすら覆す、意味不明な男なのだから。
ここまで考えて、俺はいつも疑問にぶち当たる。
何故自分は、これ程忌み嫌う相手とわざわざ関わっているのか。
誰かに問われたのならば、奴の予想外な思考を理解するためだと答えるだろう。しかしこの説明では、どこか腑に落ちない気がするのだ。
「いーーざーーやぁーー!!」
「っと。タイムタイム。」
考え事をしていたら、路地裏に追い詰められてしまった。
背中に流れる汗を悟られないように、いつもの笑みを浮かべ軽く両手を挙げる。
困った、本格的に逃げ道がない。
「何がタイムだ。今日こそぶん殴るからなぁー、臨也くんよぉー。」
「待って待って。一応俺シズちゃんと違って人間だから、その力で殴ったら本気で死んじゃうよ?」
「知るかよ。ならお前は大好きな人間と違う奴に何でちょっかいかけに来るんだぁー?殺されても仕方ないよなぁー。」
怒りが頂点に達しているのだろう、ゴキュゴキュと両手を鳴らしながら全速力で走ってくる。
俺に勝機があるとしたら、きっとほんの一瞬だけ。
「よ、っと。」
「っ!」
その手段は。
怒りに任せて大振りになった拳を間一髪で避け、奴の懐に飛び込むこと。
(上手くいった、な。)
さぞかし不愉快な顔をしているだろう、と奴を見上げてみれば。
「……………」
不意を突かれたせいだろうが、きょとんとした表情の奴がいた。
まるで、手品か何かを見た子供のような……
意味が分からない。今までの怒りはどこに行ったわけ?
「………あれ?」
そして、更に意味が分からないのは。
人とは言えないコイツに対して、人に抱く以上に愛しさを感じてしまった現在の自分。
「………あぁ、なるほど。」
この間、約1秒。
やっと全てに納得した俺は、彼の蝶ネクタイを掴んで引き寄せた。
驚いて見開かれた瞳を直視してから、唇を無理矢理奪う。
「っ…!」
「あ、びっくりしすぎて声も出ない?まぁシズちゃんだもんねー。」
唇を離してから至近距離のままニッコリと笑ってみせれば、固まっていた彼は慌てて俺を突き飛ばす。
口元を押さえて顔中真っ赤に染めているところを見ると、多分初めてだったのだろう。
「て、手前何しやがる…!」
「何って、キス?」
「…………」
「いやー気づいちゃったんだよね。」
彼への異常な嫌悪感は、他の人間へのものとは違う愛情の裏返し。
自分に無いモノを沢山持っていたからこそ、惹かれていた。そんな感情を煮詰めきった結果こそがそれだったのだと。
そもそも彼を敢えて化け物扱いしたこと自体が、彼を特別視していることの現れだったのだと。
「つまり、人間とは別格なんだ。だから君は化け物じゃなきゃいけなかった。」
「あ?」
「これからは、ちゃんとオトしに来るから。」
とりあえず、一度帰って考えを整理しよう。
無防備になった彼の横をすり抜ける瞬間、軽く背伸びして囁く。
「愛してるよ、シズちゃん。」
「っ…!!」
「じゃあねー。」
絶句しているシズちゃんに満足して、スキップしながら駅へ向かう。
後方で何かが破壊されるような音がしたが、気にしない。
ねぇ、シズちゃん。
これからどうやって、君を堕としてあげようか?
【END】
* * *
初書きイザシズ。イエー。
私の中での基本イメージはこんな感じ。この先はただの喧嘩ップルになるんだろうな!
臨也はヤンデレでも美味しいです。でもシズちゃんの男前クーデレは譲らない!
2010/4/1 季茶
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