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4.きっと帰ってくるから




──ガチャン


「三蔵お帰り〜。」


四人部屋なのに、気づいたら一人と一匹。
ジープと遊び始めてから何十分か経った後、三蔵が戻ってきた。


「あぁ……アイツらは?」
「悟浄なら遊びに行くって出てった。八戒はその様子見に行ったけど。」


多分悟浄は今、錫杖を磨きながら考え事中と思う。
たまにそんな風にしてるのは俺でも知ってるから、三蔵も八戒も本当は分かってるはず。
それでも。


「……遊びか。呑気なもんだな。」


三蔵はこうやって敢えて触れないし、八戒も気づかないふりですぐ戻ってくるだろう。
そして悟浄も、考え事が終わったら本当に遊びに行ってしまうのだ。

きっとこれが、みんなの持つ丁度いい「きょりかん」。
互いに余計なところまで踏み込まないからこそ、一緒に旅が続けられる。

だけど。


「なぁ、三蔵。」
「あ?」
「今日妖怪と戦ったときさ……」


それが分かっていても、気になって仕方なかったこと。


「八戒、なんかおかしくなかった?」


今日の八戒の、いつもと違う空気。
俺や悟浄が真っ先に攻撃するなら分かる。三蔵がキレて倒す敵を横取りするのもまだ分かる。
でも、八戒がわざわざ最初に手を出す必要はなかったはず。必要がないのに先に動くなんて、いつも慎重な八戒らしくない気がして。


「…………」
「三蔵?」


ほんの少しの、間。


「機嫌でも悪かったんじゃねぇか?」
「ふーん。」


適当に一言答えてから、煙草を取り出してしまう。
三蔵がこういう態度になるのは話す必要がないか、話す気がないときだと知っている。

だから俺は、すぐに相づちを打って話を終わらせてしまった。
三蔵がちゃんと分かってるなら、別にいーや。


「じゃあ三蔵は?」
「あ?」
「んー、やっぱり何でもない!」


……本当に知りたかったのは、戦ったとき三蔵が何考えてあんな顔してたのかだったんだけど。
まぁいーか。


──ガチャン


「八戒お帰り!」
「はい、ただいま。」


そんな話をしてたら、八戒が戻ってきた。


「八戒!俺腹減ってもっと何か食いたいからお金ちょうだい!」
「お前な……」
「良いですよ。宿から閉め出されないように、時間は気にしてて下さいね。」
「うん!行ってくる!」


小遣いにしては多めの額をポケットにつめて、俺は部屋を飛び出した。
ほんとは大好きな二人と一緒にいたかったけど、それ以上に好き同士な二人には仲良くしていてもらいたかったから。

そのためなら、二人を置いていくのもこわくない。
いなくなった三蔵を探して走り回った昔とは、大きく違う。


きっと帰ってくるから




この二人なら、何があっても絶対に戻ってくる。だからきっと俺はこうやって、二人の元を離れることが出来るんだ。





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9視点83難しい><



2010/8/22 季茶


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あきゅろす。
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