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3.君の色は美しすぎる

その日の夜。僕達は部屋で酒を飲んでいた。
三蔵は相変わらずの不機嫌顔だ。
しばらく経ったら勝手に眠ってしまうか、僕を誘ってくるか。どちらかの行動を取るのだろう。
それまでは、普通に過ごすしかない。



「八戒。」
「はい?」



しかし。
今夜の彼は、今までと違う行動に出た。



「もう、終わりにしないか?」



それはもう、衝撃の行動に。



「……と、言いますと?」
「抱く抱かれるの関係は終わりにしようってことだ。」



淡々と紡がれる言葉。
表情を窺っても、平素と何も変わりはない。



「そう、ですか。」



彼の望む僕は、ここでどう返事するのだろう。
さっぱりと、「分かりました」とか言って引き下がるのだろうか。
きっとそうだ。彼が望んでいたのは、そういう後腐れない手軽な関係だったのだ。

でも。
今の僕に……彼への想いに気づいてしまった僕に、それが出来るのか?



「………分かりました。」
「そうか。」
「では僕ちょっと出かけてきますね。昨日まで抱かれてた男の横で寝るなんて、貴方も嫌でしょう?」
「っ、お前何言って……」
「今日は帰りませんが、ずっと外泊はさすがにキツいので明日以降は同室で我慢して下さいね。では。」



目を丸くする三蔵を尻目に、部屋を出る。
ちょっと言い過ぎたかな。まぁ今の気持ちを誤魔化すにはああいうしかなかったですよね。
変に動揺したらそれこそ、好きだと伝えているようなものだし。
それにしても。



「結構、辛いですねぇ。」



飽きたのか何なのか分からないが、あっさり捨てられてしまったものだ。
きっと明日からはまたいつも通り。僕達は単なる旅の同行者になる。
そうして長い時間をかければ、この感情も癒されていくのだろうか。



「……八戒!」



そんなことを考えていたら、後ろから聞き慣れた声がした。



「三蔵?何か用ですか。」
「お前、人の話は最後まで聞け…!」
「話?」



そんなのもう、終わっているじゃないか。
貴方は僕が要らなくなった。それだけでしょう?



「全く、貴方は何がしたいんですか。」
「何、って……」
「では先に言わせて頂きますが。」



そのとき、多分僕は頭にきていた。
せっかく軽く別れてあげたのに、ついてきてしまう貴方に。
そして、その行動にどこか期待してしまう自分自身に。



「僕、本当は貴方が好きなんですよ。」



だから、その苛立ちを発散させるため。
こんなことを言ってしまったのだろう。



「言ってる意味、分かりますよね?」



振り返り彼の顎に指を添えて、そっとキスした。
見開き潤んでいる紫暗の瞳を、もう片方の手でしっかりと隠してから。



君の色は美しすぎる




ずっと我慢してきた、唇への接吻。その禁忌を犯すとき見つめるには、あまりにも綺麗過ぎる瞳だったから。





‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
83DAY企画なのに暗すぎる\(^O^)/
でもこれこそマイ83そのもn(黙れ)



2009/8/5 季茶


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