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Sticky Green 4




鈍く光る黒楽茶碗。
その底を覆う白い左手。
それに絡みつく深緑の濃茶。




鮮やかすぎるそのコントラストに、八戒は生唾を飲み込んだ。
我慢、出来ない。


「おい、懐紙取ってくれ。」
「懐紙なんて要りません。」
「は?何言って……!?」


道具に細心の注意を払いつつ、身を乗り出して三蔵の左腕を掴む。
そのまま手を口元まで引き寄せれば、キョトンとした表情がギョっとしたものに変わる。


──ペロっ


「っ!」


左には襖、前には道具、右には釜。
逃げ場がない上身動きすら取れないことを見越してかは定かでないが、とにかく正客は亭主の指先を舐めた。
始めは様子を窺うようにほんの少し、やがては何かを奪い取るかのように大胆に。


「お、おいやめろ!」
「ひゃい?」


生温かい舌触りを、手の甲という通常有り得ない位置に感じた。
気づけば指全体が口内に含まれていて、粘膜に犯されるような錯覚を覚える。
抗議の声をあげれば情けない声と共に熱い息がかかり、茶室に相応しくない行為を連想させられて。何とも言えない感覚に陥る羽目になった。


「お前っ!点前中にっ…」
「…………」
「ひっ」


指と指の間を舌先でなぞられ、あらぬ声を出してしまう。
それに満足したのか、八戒は更に舌を絡ませていった。
時折わざとらしく音をたてながら、入念に入念に茶を舐めとられて。


「いい加減にっ…!」






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