Surprise!(2) 「あのー……」 「何だ?」 旅の途中次の街まで移動しているとき、僕はおずおずと三蔵に話しかけた。 荒野を走ること自体は慣れきっているから辛くはない。しかし今のジープ内の空気には、どうしても耐えられなかったのだ。 「今日後ろの二人、妙に静かじゃないですか?」 そう、何故か今日はジープ内が異常に静かなのだ。 普段なら騒ぎ立てる二人組が、全く言葉を発さない。そうなれば当然助手席の三蔵がわざわざ喋るわけもないから、この状況は当たり前なのだが。 「さっさと街に着きたいだけだろ。」 「いやおかしいですって絶対。」 この当たり前の状況は、僕ら4人においては全く当たり前でない。 ご存じの通り、ジープ内は煩いのが基本体勢だ。疑問を持たない方がおかしいというのに。 「二人とも、本当に大丈夫ですか?」 「えっ?!う、うん。腹減ってるだけで全然元気だけど。」 「お、おぅ。俺も何ともないぜ?お前は次の街に着くことだけ考えてくれれば良いんだっつの。」 直接聞いてみると、この有り様だ。 気になるどころの話ではない。 「まぁ、それなら良いですけど……」 それでも結局、気にしない以外に選択肢はなかった。 もしかしたら二人は、何か僕に怒られかねないことをして隠しているのかもしれない。もしそうなら勝手にあちらから自滅する可能性が高いし、今何をしても仕方ない。 そう無理やり結論づけて、僕は運転に集中することにした。 * * * 二人が騒がなかったせいか何なのか、僕らは予想外に早く日付の変わらない内に次の街に辿り着いた。 すぐに宿に入り、部屋を確保。手続きを終えて大きい方の部屋に行けば、三人が適当に寛いでいた。 「今日もお疲れさん、ってか?」 「そうですねぇ。」 差し出された酒を一杯飲み干してから、部屋決めを始めた。 「今日は三人部屋と一人部屋が取れましたけど、三ぞ…」 「一人部屋はお前が使え。」 「はい?」 耳を疑った。 「えっでも、いつも皆さん一人部屋取り合うのに……」 「最近ずっと運転で疲れてるだろ?だから今日は八戒に譲るって!」 「は、はぁ……」 「猿が言えたことかよ。……まぁそーゆうこった。たまには俺達の気遣いを有り難く受け取れ、ってな。」 悟浄にウインクされて、ますます戸惑う。 まさかこの三人、揃って偽者なんじゃ…… 「……お前今すごく失礼なこと考えただろ。」 「えぇ、多分。」 「良いんだよ。ほら、さっさと寝ろ。」 三蔵に押し出されるようにして、僕は部屋から出た。 怪しい。三人ともものすごく怪しい。 でも今、ひどく疲れているのもまた確かで。 「明日になったら、また考えますか……」 欠伸を噛み殺しながら、僕は彼らの言葉に甘えて一人部屋に入った。 . BackNext |