ガイの困惑

「いくらなんでも飲みすぎじゃないのか?もうやめとけよ」

うわばみで通っている奴だが、さすがにこれはやばいだろ

店の高級ボトルはことごとく飲み干した。
色んなものを混ぜて飲んでいるため、酔いが深いはずなのだが、頬がほんのり上気しているだけで、一向に酔っている感じがない。

5本、6本と、ボトルを開けるたびに周りから拍手喝采があがりだした。煽る声も聞こえてくる始末。

(やばすぎる)

滅多にないことだが、こうなったヴァンは非常に質が悪い。酔っ払った人間というものはとにかく自覚がない。必ず酔っていないといいはる

「もう、終わりか?これぐらいでは、酔うこともできぬ」

「ヴァンよせよ。これくらいでもう帰ったほうがいいぜ」

「帰れ、と?」

ゆらり

ヴァンが急に立ち上がった。

「危ない!」

足元がふらつく。支えるため近づくと腰に腕を回され、そのままカウンターに抱え上げられた。

ガシャンッ

机上のグラスが落ちて割れた

「何するんだ!」

見上げた男の顔は妖絶な笑みを浮かべていた。しばし見とれていると、そのまま顔が降りてきて、唇が重なった。

「んんっ……!」

強い酒気を帯びた舌を絡ませてくる。うあこいついい酒飲んでんな、と場違いに思いながら、鳩尾を蹴り上げた。
しかし酔っているせいか全然効いていない。

「ばか…やろっ目え覚ませ!」

一瞬シンと静まり返った周りは、さすがゲイバー、また続きをやれと拍手と罵声の嵐が始まった。

「ジェイド!」

助けを呼んだがその姿はどこにもない。

「くそ、従業員のピンチになにやってんだよ・・」

「私には帰れといわれて、他の人間を呼ばれるのか」

敬語と普段の言葉が交じり合って、内容も支離滅裂だった。

「いいから退けって」

「半年ぶりだというのに、な。”一応親友”程度の私には冷たいのだな」

「!…悪かったよ。訂正する」

ヴァンの機嫌の下降原因がわかった。

「ふ…っ」

耳朶を甘噛され、背中にゾクゾクと快感が走る。そのまま耳元で口説きはじめた。

「今ここで抱きたい。貴公の可愛い姿をみてからずっとそればかり考えていた。いいだろう…?私にお前をくれ。ガイラルディア」
低いバリトンが耳に心地いい。愛の囁きに全身が痺れたような感覚になる。
お前の声は腰にくるんだよ!

ヴァンは周りの野次も全く耳に入っていなかった

ガイは正直穴があったら入りたいぐらいこっぱずかしいと思ったが、そんなことよりも、ヴァンの気持ちのほうを優先させたかった。

「…お…俺もだよっ!」

半分ヤケになっていった台詞に満足したのか、普段ではありえない綺麗な笑顔を作っていそいそとガイのネクタイに手をかけ、脱がし始めた。

ヴァンの気持ちを尊重したい。したいが、そこまでは無理だ。
このばか。シラフになったらおぼえてろよ。


「ん」


ヴァンの髪を掴み顔を引きよせキスをした。
舌を差し出すと、待っていたとばかりに舌を絡めてきた。
まるで忘れたかのように脱がしかけたシャツから手を離しガイの身体を抱きしめてきた。
ぎゅうぎゅうと思い切り腕に力が篭って少し苦しいが半年分の想いを受け止めて抱き閉めかえした。

ほどなくヴァンは満足したのかそのまま泥酔にはいった。



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