始まりはフェレス島
 私達は兄さんと六神将による急襲にあい、それぞれ行方、生死共に不明、私はどうやら気を失った時に兄達に連れ去られた模様。今はどこかの拠点の一部屋に軟禁されているわ

 兄と教官はどうしても私を助けたいようで、何度も説得しに来ているわ

 他の皆は大丈夫だったのかしら

 兄も教官も抜け目がないので、隙が見つからない
 この状況では、連絡のとりようもないわ

 ガイの所在だけは確認できているの
 彼も私と同様に兄達に連れて来られたよう
 部屋もわかってる、隣の部屋で兄と口論したり、色々聞こえてくるから

 おかげで兄とガイの事、色々知ることができたの  前々から兄はガイに想いを寄せているとは思っていたけど……私の勘は正しかったわ
 小さな頃から兄がよく語っていた人はガイの事だったのね

 ……いいわ、兄さん。私応援してあげる。だってたった2人の兄妹だもの!
 でもその代わり稼がせてもらうから
 協力してね



 「ティア、入るぞ」

 ノックと共にリグレットがティアの部屋に入ってきた

 「教官…今日は珍しくお一人なんですね。でも何度来られても私の考えは変わりません」

 隣のガイの部屋にはヴァンが来たようだ。話声が微かに聞こえる

 「フフ…今日は貴女を説得するために来たのではないわ、同士としてきたのよ」
 「教官…じゃあ…!」
 「ええ、話を煮詰めようと思ってコッソリ来たのよ。閣下は私がここにいることはご存知ではないわ」

 ティアの眼に光が灯る
 ティアは兄に知れないように創作していた書類の束を机の奥から取り出した
 壁際の机に2人で座る
 そのあたりだけ壁が薄いのか、隣室の物音が良く聴こえるのだ


 「その後何か進展があって?」

 リグレットは隣に聞こえないよう小声で尋ねた

 「いいえ、あれから何度も来る度兄はガイを無理矢理抱いているみたいですが、ガイが頑なに抵抗しています」

 リグレットはいきなりの発言に鼻血が出そうになるのを何とか抑えた

 「閣下が……」
 「シッ!何か聞こえてきました」

 二人は補正音器を壁に着け聞き耳をたてた



 『…ヴァン、もうやめろ』
 『聞けないな、ガイラルディア』

 チャラチャラと金属の掠れる音がする


 「教官、いつも金属の音が聞こえますが、どういうことですか?」

 リグレットは人の悪い笑みをうかべた

 「あれは逃げられないようにガイの足首を鎖で繋いでいるの、動くと擦れてと音がするのよ」
 「え……かわいそうです」
 「もちろん部屋の中くらいは自由に動けるように、長くはしてあるわ。ただし音が大きい金属を使ったの」
 「どうしてですか?」
 「ここから中の状況がわかりやすいからよ。逃げてもすぐ捕まるように、と言ったらすぐ閣下は了承してくれたわ」
 「さ……さすがですね教官」


 『……っ』
 『手を噛むな。声をだせ、ガイラルディア。』
 『ティアに聞こえる……』
 『聞かせてやればいい』
 『正気かっ!?……いやだっヴァンっ!』


 (閣下、いい感じです!)
 (ガイごめんなさい。でも私兄と貴方をモデルにしてBLラブストーリー書いて出版したいの。アニスと、バチカルのメイド達とも約束してるの。絶対成功させるからって。印税入ったら貴方の好きな音機関買って上げるから!

……だから頑張って)


 『はっ……!』
 『そんなにティアにばれるのがいやか』
 『あたりまえだっ』
 『「愛しいティア」だからな』
 『知ってたのか』
 『……ならわが妹にも聞こえるように派手に鳴かせてやろう』
 『や、やめろっ!……いやだっ』

 チャラチャラと金属が激しく揺れる音が響く


 (閣下、素敵すぎます!)


 『あ、あ……あうっ!』


 (ガイ私のこと好きだったの、ありがとう。でも今は私自分のことで精一杯なの。ごめんなさい。貴方が兄とハッピーエンドになるのを応援するわ)


 『はぅあ!あン…やっ!』
 『いい声だ、隣にもよくきこえてるだろう』
掠れた声とすすり泣く声がきこえる
 『ひっく……ヴァン……も、やめっああァっ』
 『私と共に来ると誓うか、ガイラルディア』
 『あ、っあ、ああぁ……ねが……いやあっ』


 (閣下、早すぎます!もっと追い詰めないと)
 (ガイダメよ、反抗したら兄さんもっと酷い事するわよ。すぐ調子にのるんだもの。多分私の事好きだっていったから嫉妬してるのよ。優しくして欲しかったら甘えなくちゃ)


 「ティア、筆はすすんでる?」
 「え、ええ、でも教官、なんだかラブな感じではないので私の作風と少しずれてしまいます」


 『は……ひっ……く』
 『強情だな』
 

 「今は純愛よりもハードラブが流行っているのよ。丁度いいわ、これも修行と思って勉強しなさい。そのほうが貴女の作品に幅がひろがるわ」
 「はい!教官、私やります」
 「フフ、その息よ。さあ閣下はここからが素敵なのよ」
 「そうですね。兄は執念深い性格ですから…」

(ガイ頑張ってね)


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あきゅろす。
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