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Snatch成長後編BL(完結)
37、親友
◇◇◇

翔吾の車に乗ったが、どこへ行くのか気になる。

「あの〜、やっぱホテルっすか?」

「うん」

「うんって……、明るすぎ」

俺達は秘めた関係だ。
にっこりと微笑んで頷く事じゃない。

「だってさ、嬉しいんだもん、友也がOKしてくれて」

「あ、うん……」

でも、純粋に喜んでるなら……責めるのは可哀想だ。


またラブホに来てしまった。

体を綺麗にしてシャワーを浴びながら、ふと考えた。
寵愛されるってこういう事なのかな……と。

英雄色を好むというが、昔から権力者は女を囲い、男色に走る者は男にも手を出した。
選ばれた者達は権力者に尊敬の念を持っていたと思うが、それがイコール愛情かと言えば、必ずしもそうじゃない場合もあったと思う。
それでも、自らが尊敬する人物の為になるならと、そう思って身を捧げたに違いない。

俺の場合、翔吾は親友だし、力になりたいと思ってる。
権力者云々と比べたら、随分スケールの小さい話だが、心情的には権力者に身を捧げた人達と似てるような気がした。


バスローブを着て部屋に戻ったら、翔吾はソファーでタバコを吹かしていた。

「珍しいな」

最近はタバコを吸うところを見てない。

「ふっ、僕がタバコを吸うの、初めて見た時はびっくりしただろ?」

「うん、まあー」

確かに意外だと思った。

「精一杯背伸びしてるのかもな、かっこ悪い話だよ」

翔吾は苦笑いを浮かべて言う。

「そんな事ねぇ、タバコ似合ってる」

昔なら違和感ありだろうが、今はさまになってる。

「ほんとに?」

「ああ、翔吾カッコイイじゃん、女にもモテるだろ?」

これを言ったら嫌な顔をするのはわかっていたが、敢えて言ってみた。

「あ〜、やめてくれ、それは要らない」

思った通り、手をひらつかせて顔を顰める。

「ごめん、たださ、つきあいで色んなとこに行くと、ストレス溜まるんじゃねぇかな〜と思って」

だけど、だからこそリアルじゃ苦労すると思う。

「うん、こんな話、友也にしか出来ないけど、クラブに飲みに行ったらホステスが必ず横に来る、でも……嫌な顔をしたら周りにバレるから、我慢するんだ、無理矢理笑顔を作って、そしたらさ、黒木がさり気なく間に割って入ってくれる、あいつは元はバイだから、女が身近にいても大丈夫なんだ」

黒木は翔吾を守ろうとしている。

「黒木さん、偉いな」

「ああ、随分助けられてるよ、ただ、それでもやっぱり、周りは気づいてる、だからさ、うちに頼み事をする時はちゃんと男をあてがってくる」

「あ、やっぱそういうの、あるんだ」

テツもそういうのがあると話していたし、若頭なら尚更だろう。

「ああ、金が絡む事となると笑ってられないからね、ちゃっかり性的指向を調べてる、大体噂になってるしね、普段は僕が一生懸命取り繕ってるのを見て、内心笑ってると思う」

翔吾はタバコを灰皿で揉み消して言ったが、やっぱりかなり大変なようだ。

「そうか、でもさ、周りがどう思おうが、他人にとやかく言われる事じゃないし、気にしちゃ駄目だ」

努力して体を鍛え、実際に強くなったんだから自信を持って欲しい。

「うん、気にしないようにしてた、パパがお見合いさせるまではね、僕だって普通になれたら……、パパみたいにバイなら楽になれる、これはほんとに恥ずかしい話なんだけど、ノーマル向けのアダルトサイトを見たりした、ひょっとして……そういう気にならないかな? って思って、でもやっぱり駄目だった、興奮するどころか気分が悪くなって吐きそうになった、どうしようもない」

翔吾は言いにくそうに目を伏せて明かしたが、まさかそんな事までしてるとは思わなかった。
その手のアダルトサイトは、翔吾からしたらただおぞましいだけで、苦痛と言ってもいいだろう。
そんなものを目にするほど……追い詰められている。

「翔吾……」

切なくなって衝動的に抱き締めた。

「なに? 僕の事……、可哀想だと思った?」

同情したのは当たってるが、安易に可哀想だとか、そんな風に言っていい事じゃない。

「無理するなよ、な、言っただろ? 俺やテツ、黒木さんだって、みんな翔吾の味方だ、ひとりじゃねぇから」

性的指向の事は、いくら悩んでも苦悩するだけだ。

「うん、黒木には悪いと思ってるよ、でもさ、対等にものを言ってくれるのは……友也だけだから」

「そっか……、ああ、確かにそうかも」

俺が翔吾にタメ口なのは、高校ん時に友達として仲良くなったからだが、その延長で今も自然とそうなっている。
あんまり意識した事がなかったが、言われてみれば、こうやってラフに話をするのは俺だけだ。

「ベッドに行こっか」

翔吾は俺の背中を抱いて、耳元で囁いた。

「うん……」

立ち上がり、一緒にベッドへ向かった。

布団の中で抱き合えば、肌が擦れあって気分が乗ってくる。
唇が重なり、手が優しく肌を撫でてきた。
前回と比べたらリラックスした感じだ。
俺と寝た事で、少しは気持ちが安定したらしい。
SEXして良かったと思うのは馬鹿げた話だし、テツにバレたら刺青が待っている。
但し、これは俺と翔吾、2人だけの秘密だ。
だから、お役に立てて良かったと、そう思う事にする。

今夜は乱暴な真似はしないだろう。
これなら安心して身を任せられる。
巨根は別として……。







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あきゅろす。
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