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小話
夜生×伊行
続男娼伊行、夜生さん視点



「ああ、分かってる。あとから行く」


下の奴からかかってきた電話を終わらせ、服のポケットへ戻し、そこに入っていた鍵を取り出す。
一番奥の部屋へ行き鍵を開ける。

窓のない部屋。
あるのはベッドと小さなテーブルくらい。あとはユニットバス。
そのベッドの上に全裸の子供が丸まっている。身につけているのは首輪だけ。逃げ出した時のために首輪にはGPSが付いている。
ゆっくりとベッドに近付く。シーツがぐっしょりと濡れていた。


「伊行、また漏らしたの」

「………」


瞼が開き、光のない瞳が僕を見つめる。

意外にも伊行は壊れなかった。いつも悲しげな目で僕を見ていた。
僕に触ってと言う。だけど違う、伊行は誰でもいいんだ。誰に触られたって泣いて喜ぶ淫乱な子供。
伊行の頭の中にはたくさん男がいる。天下、裕次郎、桐、他にもたくさん。そんな奴ら忘れてしまえばいい。忘れて、一生僕に飼われればいい。


「伊行、」


壊すためにステージに上げた。だけど壊れなかった。だから、3区でも有名なゲスな男に伊行の一日を売った。
戻って来た伊行は、死んでいた。
やっと望んだ結果になった。もう誰にも触らせない。

それから約一週間、伊行は排泄すら自分で出来なくなった。一日中、ベッドの上。
ぼーっとしている伊行の髪を撫で下ろす。何の反応もしない。声も出さない。出すのはセックスの時の呻き声だけ。


「…伊行、」


これが望んだ結果、
だけど何故かむなしい。最近、伊行の笑った顔や怒った顔、泣いた顔ばかりが浮かぶ。
いやもうホントは分かってる。
僕が好きだったのは、
そこまで考えたところで、伊行の手が僕の手に触れた。まるで、大丈夫?と言っているようだった。
堪らず伊行をきつく抱きしめる。

胸にぽっかりと穴が空いた。きっと二度と埋まる事はない。
壊したのは僕だ、
…ああ、だけど僕はやっぱり、お前の笑った顔が好きだったんだ


―…夜生さん、えと、あ、あの…えっと…、好き、です、えへへ





やおあん

後悔、それだけ。



まえつぎ
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