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隣り合わせ
※人外、グロ



鋭い歯が二の腕に突き刺さり、ぶちぃっと右腕がちぎれた。喉が潰れる程の叫び声が出た。
すぐ隣では俺と変わらない大きさの狼がばりばりと骨ごと俺の腕を咀嚼している。

死ぬんだと思った。


奴隷制度のあるこの国で、俺は奴隷以下の扱いを受けて育った。呼ばれる名前すら無い。
衰弱し、使えなくなった俺は獣人が住んでいる森へと捨てられた。

死んでも構わない。
生きていても俺の居場所はなくて、辛いだけだ。

俺の腕を食い終えた狼が今度は首に歯を立てる。ぶつっと首に歯が食い込んだ所で意識を失った。





眩しさで目が覚めた。
真っ白な天井が目に入り、死んでいないのか、とぼんやり思った。

すぐ隣にふわふわとした感触があり、動かない首の代わりに視線だけを動かし、隣を見た。


「……っ、ぁ」


虎がいた。
俺の倍近い身体を持つ虎が、隣にいた。俺に寄り添うように横になっている。
その虎と目が合い、傷ついた喉が引き攣る。上手く声が出ない。
視線すら反らす事が出来ず、虎と見つめ合う。すると、虎が顔を近付けてきた。
喰われるとぎゅっと目を閉じたが、襲ったのは痛みではなく暖かいものだった。


「……」


ペろりと頬を舐められ、恐る恐る虎に左手を伸ばし頭に触れる。全く嫌がるそぶりもなく、優しく撫で下ろす。お返しなのか、頬から首筋を何度も舐め上げられた。
今気付いたが、ちぎられた腕も噛まれた首にも包帯が巻かれ綺麗に手当てされていた。


「…ぉ、まえ…が、たす、けて、くれた、のか…」


掠れた声。
喋る度に喉に痛みが走った。


『まだ話すな、痛むだろう』


頭に直接響く低い声に驚く。その声はきっと横にいる虎のもの。


「…は、なせ、るのか…」

『何を言う。我らは獣人だぞ』


ああそうか、忘れていた。
獣人の森へ捨てられたんだった。しかしここは森の中とは思えない。まるで貴族の住む城の一室だ。
ベッドはないが、床に敷かれたふかふかの布団。それを囲う薄く透けた布が天井から下がっている。
そこに俺は寝ていた。


『まだ休んでいろ、』


頬を舐められ、ゆっくりと瞼が閉じていく。
最後に見たのは虎ではなく、漆黒の髪を持つ綺麗な男だった。





―――――



人外にハマってしまった結果がこれです。
しかし難しい。世界感なんてそんなもんは適当だ…!



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あきゅろす。
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