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滲む指先零度



右手の人差し指と中指と薬指がしもやけ気味で腫れている。


「さみ…、」


は、と息を吐き出せば白く空気中を漂い、消えた。
俺は冷え症で特に足先や手先は、ありえないほど冷たい。だけど、冷え症と同時にひどい汗かきで手袋をすれば、じわりと汗が滲み余計に酷くなってしまう。
だから手袋は駄目。するとすれば、マフラーくらいか。手はポケットに突っ込むしかない。
それでも汗は滲むけど。

冬は嫌いだ。しもやけのせいで痒いし、唇はあれるし。
でも夏も嫌い。汗かきだから、びしょびしょになるし…


学校に隣接しているお店に入り、ほっと息を吐く。中に生徒はおらず、店員だけだった。
あたたかい…

通っている学校の売店は、校舎内からもいけるし、外からも行けるようになっている。寮生もいるからという事で夜七時までは開いてる。朝も七時から。俺は寮生じゃないけど、たまによる。


「いらっしゃいませー」


間延びした男の声が耳に入る。
この店は理事長の息子がほとんど一人で切り盛りしている。
社交的で優しいから人気がある、この人目的で来る奴もいるらしいけど、俺はパン目的。
コッペパンにツナが挟まっているやつ。これが好きで買いに来る。

それを手に取り、レジに持って行く。お会計105円。
結構でかい割に安い。
お金を支払い、袋に入ったそれを受け取った…


「つめた」


一瞬、レジの向こう側にいる男の人と手が触れ、そう言われた。


「…すんません」


あまり話すのは得意ではない。
俺は何でも気にし過ぎるタイプで、人目が無駄に気になったりしてしまう。
だから、こうやっていきなり知らない…話した事もない人とのこういう状況は避けたい。

軽く頭を下げ背中を向けたが、マフラーを掴まれ、振り返る。


「…なんすか」

「これ、使いまわしだけど」


はい、と暖かいほっかいろを渡された。


「どう、も」

「気をつけて帰れよ」


にこりと笑うその人に戸惑いながら、もらったほっかいろを握って店から出た。

暖かいほっかいろ
これでもやっぱり汗が滲む。
近くのごみ箱にそれを捨てた。

指が痛い、痒い。
早く冬が終わればいいのに





―――――



包容お兄さん×冷え症高校生
心も冷え症な高校生と包容力たっぷりの優しいお兄さん。
じわじわお互いを意識して、お兄さんが押していけばいいと思う。
とにかくしもやけが痒くて辛いんだということを伝えたかった…



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