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失恋愛
親の都合で高校一年の秋、寮のある学校へと転校した。クラスに馴染むためには最初の挨拶が肝心だと心の中で何度も呟いて、
「…冴島、怜南、」
結局さえじまれな、という自分の名前しか言えなかった。こういう人前に出て挨拶というのはかなり苦手だ。
ちゃんと挨拶出来なかった事にしょんぼりしながら、用意された一番後ろの席に座る。一番後ろなのに、クラスメイトからの視線がすごい。おれなにかしただろうか。
休み時間になると、おれの机の周りを可愛らしい男達が囲む。男子校だから、男しかいないのだけど、女の子のように可愛い子もちらほらいる。
そして口々に、
「カッコいいね!」
「恋人とかいるの?」
「連絡先交換しようよ」
などと、全員一緒に話し掛けられ、何も答えられずにいれば数分後には、
「つまんなーい」
と、おれの周りから解散していく。
友達作り失敗。
自分自身、顔の良さに気づいていないわけではない。近所の人には毎日のように、今日もイケメンねと言われていたし、中学の時も人よりは告白された自信がある。
だけど、そんな顔さえも内面が悪ければ意味ないわけで、いつもつまんないと言われたりする。
話すというコミュニケーションは人間にとってはすごく大切らしい。
教室にいるのが何だか辛くて、昼休みは教室から逃げ出した。外に出て裏門近くに行けば何故かベンチがぽつんと置いてあり、そこに座る。ここなら誰も来ないだろうと、身体の力を抜く。
空を見上げる。雲がゆっくり流れていた。
「先客がいるとは、珍しいな」
突然声が聞こえて、そちらをばっと見れば、イケメンがいた。芸能人ですって言われたら納得するくらいのイケメン。緩んだネクタイの色からしてひとつ上の先輩。
何も言わずにその先輩を見ていれば、先輩は近寄って来て隣に座った。
「ここ俺の特等席」
「…え、ぁ…、そう、なんです、か」
特等席という事は、おれは座っちゃ駄目ということだろうか。
「すいません、おれ退きます、」
「ここは俺の特等席って言われてるだけだから。お前が退く必要はない」
腰を上げようとしたが、その言葉に動きを止める。
「お前名前は」
「冴島、怜南です」
「れな?可愛い名前だな。怜南ちゃんか」
「ちゃんはやめてください」
「じゃあ怜南」
じっと見られながら名前を呼ばれ、ちょっとドキリとした。
「…先輩の、名前は」
「清正」
「きよまさ…?」
「そう」
よく出来ましたと頭を撫でられる。
初対面だけど、この人は嫌いじゃない。たぶんこの場所のせいもあるけど。
「怜南は付き合ってる奴いんの?」
「いません」
「じゃあ俺と付き合わね?」
「…へ、」
ぽかんとしていれば、先輩の顔が近付き、
「慰めてよ」
ちゅ、と口端に柔らかい感触。
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たぶん会長×イケメン転校生
会長は少し前に失恋してるという設定。
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