╋
雪の日の別れ
雪の積もった寒い冬の日、付き合っている相手と出掛けた。特に用事はなかったが、家にいても暇だからという事で寒い中出掛けたのだ。
「…さむ」
マフラー持ってくればよかったと呟く。
「だから言っただろ、馬鹿」
三つ年上の恋人は優しくて頼りがいがある。カッコイイし、頭も良い。何の取り柄もない俺と付き合ってるのが不思議だ。
「馬鹿って言うな」
「はいはい、悪かったよ」
ぽんぽんと頭を軽く叩かれた。
子供扱いされる事も慣れた。付き合い出した頃は嫌で嫌で仕方なかったけど、今は年下だからしょうがないと諦めている。
「愁太、」
歩みを止めた湊に名前を呼ばれ、隣に目を向ける。
「なに?」
ちらちらと雪が降り出し、思わず空を見上げた。
雪が降る事も積もる事も、俺達の住む場所じゃ珍しくて内心はしゃいでいる。
「別れようか」
「んー…、は?…今、何て、」
きっと聞き間違い。
俺の耳がおかしいんだ。別れようなんて、言うわけ、
「俺と別れてほしい」
ないんだから。
お願いだから、嘘だと言って。
「な、に…急に、どうして」
無理矢理笑みを浮かべる。
なあ嘘だろ?俺、アンタの事好きなのに。なんで今?
「…好きな子がいる」
「…え、」
「悪い」
ここで泣きわめいて、嫌だ嫌だと言う事は出来る。だけどそれをやってしまえば、迷惑かかるし、きっと惨めだ。
「…そっ、か」
笑ってそう言うしかなかった。
ホントは別れたくない。ずっと一緒にいるんだって思ってた、なのに…こんなのって、
「どんな、人…?女の人?」
「ああ」
それを聞いて、どん底に落とされた。勝てるわけがない。
「…そっか、わかった、」
笑おうとした、したけど無理で、涙が零れた。慌てて拭うけど相手にはバレバレで、
「っ、愁太」
「ごめ、俺大丈夫だから…、別れたいのも分かったから、」
それ以上言えなくて、その場から走って逃げ出す。俺を呼ぶ声が後ろから聞こえた。
しばらく走ったところで雪に足を取られ、転んだ。誰もいない道の真ん中で座り込み、泣いた。
「っく…ふ、う…っう、」
夢だと思いたい。
だけど、雪の冷たさが現実だと教えていた。
―――――
別れ話
どうせまた復活する。半年とか一年後くらいに。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!