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シリアスシリアル



大学に行くため、田舎から上京した。安いアパートを借りようと思ったが、やはり都会の家賃は思った以上に高く、選んだのは他の人と生活する道だった。
いわゆる、シェアハウス。しかしそんなお洒落なものではなく、古ぼけた一軒家。そのせいか家賃は一万円ちょっと。貧乏な俺にはすごく有り難い。

他人との生活を始めて、約一週間。早くも挫折しそうだった。
大学の入学はまだ先で、慣れようと早めに入居した。入居しているのは俺を含めて三人。
まずは藤本和也、この人は話しやすいし、フレンドリーだ。
次に月見里遊、月見里と書いてやまなし、と読むらしい。そう問題はこの月見里さんだ。
この二人は友達で俺より三歳ほど年上で俺が通う予定の大学に行っている。つまりは先輩なのだ。

問題である月見里先輩は、とにかく見た目が怖い。イケメンなのだが、目付きが鋭く、睨まれているんじゃないかと毎回勘違いしてしまう。
最初の挨拶だって最悪だった、
俺は潮峰ナノンという変わった名前をしている。自己紹介すれば、月見里先輩はタバコを吸いながら一言、変な名前とそれだけ言ってどこかへ行ってしまった。
それでもう月見里先輩の印象は最悪になった。

最悪だけど、何とか仲良くなろうと朝早く起きて、朝食を作れば、月見里先輩は、オレ朝、シリアルしか食べねえから、と一口も食べてくれなかった。藤本先輩は喜んで食べてくれたのに。
結局残った一人分の朝食は俺が昼ご飯としてまた食べた。
月見里先輩にシリアル全く似合わないと一人愚痴ったのはつい最近の事だ。


「はあ…、」


自室のベッドに寝転び、ため息をつく。藤本先輩はバイトでいない、月見里先輩は隣の部屋にいるはず。
二階建てのここは一階が共有スペースになっており、キッチンとリビング、お風呂がある。あとは和室があったりする。二階が個人の部屋になっている。五部屋あるから、あと二人は入居出来ると藤本先輩から聞いた。トイレは一階と二階に一つずつ。
一番奥の部屋が藤本先輩の部屋で、その向かい側が月見里先輩。そしてその隣が俺。

部屋を変えたいとすごく思う。だけど、今更変えたいと言っても藤本先輩に迷惑をかけてしまうので我慢している。いつか仲良くなれる日が来ると信じて。


「喉渇いた、」


ベッドから立ち上がり部屋を出ると、ちょうど月見里先輩も出て来て、鉢合わせした。


「…あ、」


思わず声が出る。
火のついたタバコをくわえた月見里先輩はちらりと俺に視線を向けただけで、一階へと下りて行く。


「…挨拶くらい、しろよ」


ぽつりと呟く。
俺も出来なかったから人の事言えないけど、あからさまに無視しなくてもいいだろ。
さすがに、傷付く。
俺、何か嫌われるような事しただろうか。それとも単純に他人と関わるのが嫌い、とかか?

俺だって、他人と関わるのはあまり好きではない。むしろ嫌いな方で…、でもずっとこんな事言ってられないから、ここに来たんだ。


「…嫌になりそ、」


ストレスが溜まる一方だ。





―――――



強面イケメン×ゲイ
一応主人公もそこそこイケメンという設定。
付き合い出したら激甘になる。それまでは、ぎくしゃくそわそわ。

名前考えてくださってありがとうございましたー!有り難く使わせていただきます…!



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あきゅろす。
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