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好きだけど
「女子になってみたい」
部活終わりの体育館の窓から、わいわい騒ぎながら帰っている女子を見つめる。
「ぶっ、」
隣に座っていた先輩が吹き出す。
「何笑ってんすか」
「お前の女装姿想像しちまった」
「……いや、そーじゃなくて」
隣にいる先輩はバスケ部のエースで、それはもう女子からモテモテだ。それに対して俺は空手部所属。クラスメイトの女子からはむさ苦しいとよく言われる。
空手部の部長と先輩が仲良くてそこから俺も仲良くなった。
「お前の女装はギャグだな」
「だから女装はしませんってば」
こんな筋肉質の奴が女装なんかしたら、笑われるだけだ。
「もし生まれ変わるなら、女の子がいいなあって話です」
「不細工になりそう」
「先輩ひどっ」
げらげら笑う先輩に釣られて俺も笑った。
そんな話をした次の日の放課後、また先輩と部活終わりに体育館でだらだらしていた。
先輩はシュートの練習をしている。そんな先輩を見つめる。
「先輩、」
「あー?」
「夢見たんです」
「夢ー?なんのー?…よっ、と」
シュートを打ちながら返事をする先輩。先輩の投げたボールは綺麗にゴールに吸い込まれた。
「俺の胸が、女子みたいになる夢です」
「ふはっ、マジかよ」
「マジっす」
それだけならよかったんだけど、そのあとが問題だった。
「先輩も出て来たんすよ。それで、笑いながら、俺の胸揉んで、」
「ぶっ、はははッ!」
「笑い過ぎっすよ…!」
ボールを脇に抱え、こっちに向かってくる先輩はまだ笑っていた。
「んで、夢精したって?」
「っなん…、」
顔が一気に熱くなる。
先輩を見ると、ニヤニヤと笑っていて、思わず顔をそらす。
「図星かー。何か今日変だと思ってたんだよなあ」
そうなのだ。先輩に胸を揉まれる夢を見て、俺は夢精してしまっていた。だから今日まともに先輩の顔が見れなかった。
目の前に立つ先輩の足を見ていたら、頭に衝撃がきた。
「いっ、た!」
どうやらバスケットボールを頭の上に落とされたらしく、後頭部を直撃した。
「何すんですか…!」
ばっと見上げると先輩は相変わらず笑っていた。
「正直、オレは柔らかい胸より筋肉質な胸が好きだけど」
「…は?」
「お前が女になったらオレすっげー困るわ」
「え、え?」
果たして先輩は何が言いたいのだろうか?全く分からない。
「つー事だから、付き合うか」
「い、や…ちょっと理解出来な」
「しなくていい、分からせてやるから」
付き合うって、なに
え、そういう意味?
え、俺、女子が好きなのに?
え、先輩も女子好きじゃないの?え、何でドキドキしてんの俺
「頭破裂しそうなんすけど…」
「じゃあ破裂しろ」
…先輩、ひどい
―――――
先輩×後輩
馬鹿みたいな話を書きたくて。
共学で、女子にモテモテの先輩とそうじゃない後輩。
とりあえずアホな話しかしない、といいな。
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