短編
6
「お前それ、確実じゃねぇかよ」
屋上で会長と二人
九条先輩とあった事を話すと、会長は嬉しそうに笑った。
「何が確実なんですか。ただ、からかってるだけとか…」
自分で言っておいて悲しくなった。でも、そう思わないと駄目なんだ…期待するから。
「伊織がからかうはずない。それはお前だって分かってるだろ」
そりゃあ、九条先輩の性格からして気持ちをからかうような事はしない。まぁこの前会った時は、鼻血の事をからかわれたんだけど…
「それは、分かってますけど…。俺は…」
駄目なんだって
「じれったいな、お前ら。明らかに両想いじゃねぇかよ!さっさと告れ」
「嫌ですよ!」
貴恵が泣いてしまう。兄として、それは嫌だ。この気持ちが伝わらないとしても、それは我慢する。
「何でだよ!」
「てか会長は何でそんなに気にするんですか!」
会長には全く関係ないのに。ただ九条先輩の幼なじみっていうだけ
「オレみたいになってほしくねぇから」
「は?」
そう言った会長はほんの少し辛そうな顔をしていた。
「もしかして会長って好きな人、いるんですか…?」
「いる。もう何年も片想いしてる。だけど、きっと叶わねぇよ、オレの場合はな」
「どうしてですか」
「そういう運命だから。よく言うだろ、禁断の恋とか…無理なんだよ、好きになっちゃいけねぇ人をオレは好きになったんだよ」
笑う会長は今までに見た事ないくらい儚い姿だった。
「でも、お前らは両想いだろ。まだ気持ちを伝えていないだけ」
「……」
「貴恵の事なんか気にする必要なんてねぇんだよ、どうせ貴恵はフラれるんだから。だから告れ」
「…会長は告白しないんですか」
「はあ!?」
だってずるい。俺ばっかり言われて、それなら会長だってその好きな人に告白するべきだ。
「無理だって言ってるだろ!お前らみてぇに両想いじゃねぇんだよ!側にいられなくなるだろ!」
「本当に無理、なんですか…?」
「無理だ。それに相手には、恋人がいる」
恋人って…
それはかなり辛いんじゃないだろうか。人の恋を応援してる場合じゃないだろ。
「…すみません、無神経な事言って」
「いや平気だ。会う度に恋人といちゃつくあの人よりはマシだ」
会長は笑っていた。
どうして笑えるんだろう。絶対辛いのに。
「だから、お前らには幸せになってほしいんだよ。約一名不幸になるけどな」
貴恵の事ですよね…
「たぶん貴恵は本気で好きなんじゃない。勘違いしてるだけだ」
あぁ、確かに貴恵ならありえる。貴恵は好きの意味を履き違えている。
「頑張れよ、兎喜」
「…はい」
思わず返事をしてしまった。
この想いを大好きなあの人へ、伝えてもいいんだろうか?本当は伝えたい。勇気はあまりないけど、会長が応援してくれている。
だから、頑張らなければ
ごめん、貴恵。俺はお前を傷付けるかもしれない。
それでも伝えたい
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