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短編
3



翌日の放課後、図書館に入ろうか悩んでいると、知らない人に話しかけられた。


「…なんすか」

「君、よくここ来てるよね」


中関さんと同じ制服。
ナンパだろうか。


「ナンパ?」

「うん、そう」


正直だ。正直すぎて、あまり嫌な気分にはならなかった。


「君の顔タイプなんだよね。一回ヤらない?」

「俺、中学生だけど…」

「関係ないよ、そんなの」


この人ちゃらい。初対面でやろうとか。
ぼーっとその人を見ていると、顔が近づき、キスされた。


「ファーストキスなんだけど」

「うわマジラッキー」


笑うその男を見ていると、ぐいと腕を引かれた。振り向くと、中関さんがいた。


「あれ、中関じゃん」


同じ学年なのか、その男は中関さんを知っているようだ。


「隼麻くん、ちょっと」


無表情の中関さんに腕を掴まれたまま、図書館の中に入る。いつもの二階席の一番奥、


「何で長谷川じゃないの」

「…は、」


最初の言葉がそれ


「僕、アイツ嫌いなんだよね。だからアイツだけはやめて。キスするなら、長谷川と」

「あんた最低だ」


決めた。
もうここには来ない。


「隼麻くん…?」

「あんたの趣味を俺に押し付けるな。うざい」


ドンと中関さんを押し、その場から逃げた。
なんだよ、長谷川さんとキスすればあんたは満足だったのかよ…
やっぱり、俺はただの観察対象でしかなかったんだな。

めんどくさい、もういいや
…どうでもいい





―side.郁



「中関?どうした?」


図書館の机に顔を伏せていると長谷川が来た。


「…隼麻くんに嫌われた」


ショックすぎて、楽しみにしていた小説を読む気にもなれない。


「お前、何したんだよ」

「キスなら長谷川にしてって言っただけだよ」

「はあ?」


戸惑う長谷川にさっきあった事を話すと、長谷川に頭を殴られた。


「お前マジで最低だな」

「やっぱり腐男子ってうざい?」

「そうじゃない。隼麻の気持ち、分からないのか」


何故、呼び捨てになっているんだろう。それが、気になった。


「隼麻くんの気持ち?」

「…隼麻はお前が好きなんだよ。他の誰でもなく、お前が」

「うそ」


だって、そんな雰囲気じゃなかった。でも思い返せば、隼麻くんの言葉は…
中学生はアウトなんすかって、あれは自分の事だったんだ。


「最低だね…」

「ああ最低だ」


隼麻くんに酷い事ばかり、言ってしまった。


「お前さ、隼麻の事どう思ってんの。ただ理想的なネコだから、構ってんの?」

「それは、」

「他の男に、取られてもいいのかよ。本当は違うだろ、オレが隼麻にキスしてもお前はムカつくんじゃないのか?どうなんだよ」


隼麻くんの夕日に染まる横顔が、とても綺麗で好き。あまり笑わないけど、たまに目元を緩めて呆れたように笑う隼麻くんが好き。
隼麻くんには、ずっと綺麗なままでいてほしい。
だからなのか、真面目な長谷川なら隼麻くんを綺麗なままでいさせてくれるんじゃないかと


「言っとくが、付き合ったらオレはとことん虐め抜く人間だぞ」

「駄目!!隼麻くんにそんな事しないでよ!」

「だったらお前が隼麻を守れよ。アイツほっといたら、他の男に喰われるぞ」


駄目、駄目だよ。
隼麻くんの隣にはカッコイイ大人の人がいいとか、言ったけど


「やっぱり僕が隣にいたい」


小説読めなくなるくらい、君が好きみたい。気付くの遅くて、ごめんね。



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あきゅろす。
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