短編 物色禁止 リクエスト 珍しくひとりで出掛け、いつものように本屋へ向かえば、めちゃくちゃカッコイイお兄さんが雑誌を立ち読みしていた。 もろタイプな顔をしていた。 だから気になって、その人をさりげなく観察する事にした。 いや、旦那さんが一番だけどさ、気になるじゃん。 誰かと待ち合わせで、もしかしたら不良くんが来るかもしれない。 わりぃ、待たせて…とか言ってくるかもしれない…! それで旦那さん並にイケメンな彼が、そんなに待ってないよ、って不良くんの頭をなでなで…そして照れる不良くん。 あぁ最高のシチュエーション。 「マジイケメン。タイプ過ぎる。一回だけ、」 怒られてみたい。 頭の中で、若干浮気をしていると、がしりと後ろから後頭部を掴まれた。 「一回だけ、浮気でもするつもりか、おい」 「……だっ、旦那さん…何故、ここに…」 「お前の行きそう所は全部把握してる」 わあ、すごい。 俺愛されてるー。 「帰るぞ」 「えっ、まだ漫画買ってない!」 「知らん」 「酷い!」 ずるずる引きずられ、家に帰宅。 「で?」 壁際に追いやられ、逃げられないように俺の顔の横に手をつく旦那さん。 「いや、あの浮気するつもりはこれっぽっちもなくてですね…」 「一回だけなにされたいって?」 「…お、怒られてみたいなぁ…なんて…ははは」 「ドMかお前」 「ちっ、違いますー!!」 ドMじゃない! いたぶられたくないもん。 ただイケメンだったから、つい 「だって、顔がタイプだったんですもん!だから気になって、ちょっと観察して…イケメンさん、どんな風に怒るのか、っひ!」 ガンッと壁を殴る旦那さんにビビり肩が跳ねた。 「…顔が、タイプだって?」 「だ、んなさ…」 「じゃあ今から告白でもしてくるか?なぁ?」 キレた旦那さんを見て、ダラダラと冷や汗が流れる。 「違っ、俺が好きなのは、旦那さんだから告白なんかっ」 「どうだか。たまに分からなくなる、お前が何考えてんのか。オレの気持ち気にしてないだろ。腐男子だがなんだか、知らねぇけど、出掛けりゃあの男がいい、どんな奴なのかって。うんざりだ」 しんだ。 旦那さんに嫌われた。 「ごめんなさい、しにます」 「はぁっ!?」 「俺、旦那さんに嫌われたら生きていけないので、しにます」 旦那さんの腕を退かそうと掴むと逆に旦那さんに手を取られた。 「馬鹿か!嫌いとは言ってないだろうが!!」 「じゃあどうすればいいんだよ!腐男子やめれば旦那さんは納得してくれるの?旦那さんが嫌なら、もうやめる。好きじゃなくなってもいい、だけど…嫌いにはならないでほしい」 目に涙を溜めながら言うと、旦那さんはため息をついて俺を抱きしめた。 「嫌いにはなってない。悪い、言い過ぎた。お前の趣味も別に気にしてない」 「…っぅ…旦那、さん…」 「ただ他の男ばっかり見るな。さすがにそれは嫌」 「…嫉妬…、ですか…」 「あぁ。だから他の男見るの控えろよ、特に攻めっぽい奴は」 受け子はオッケーなんですね。 旦那さん優しい。 やっぱり俺の相手は旦那さんしかいないよ。 ――――― 旦那さんの嫉妬でした。 奥さんが毎回いい男を物色するのが、嫌な旦那さん。 . [前][次] [戻る] |