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短編
出会い
―side.旦那さん



いつものように視聴覚室に行くと先客がいた。そいつは窓から校舎の方を見ていた。
オレのファンか何かかと思い、舌打ちする。舌打ちが聞こえたのか、そいつは振り向く。

どこかで見た事ある顔
ああ、確か隣のクラスだったはず。それにランキング上位者。無表情のそいつは何を考えているか分からなかった。


「イケメン」


そいつがぽつりと言った言葉に耳を疑った。


「は?」

「あ、すみません。さっきのは忘れてください。イケメンさんがイケメンすぎて思わず言ってしまった。それじゃさよなら」


オレの横を素通りするそいつの腕を掴む。何故止めたのか、オレ自身分からないが、イケメンさんという言葉が気になった。


「あの、なにか?」

「イケメンさんってオレの事か」

「そうですけど」


たったそれだけの会話。
だけど気になった、無性に


「お前、名前は」




それからどんどんコイツに溺れていった。
知っていくにつれて本当の顔を見せてくれるようになった。
コイツがオタク…腐男子という事も。
まぁ知らなくていい知識まで教えてくるんだが…
イケメンさんから始まり、彼氏さんになって、旦那さんに昇格。
照れ臭いが嬉しいものだ。

心の底からコイツと一緒になれてよかったと思う。





「だーんなさん」

「あ?」


目の前には大人びた顔の恋人。
出会ってからもう何年も経つ。
二十歳を過ぎてもオレ達は相変わらずだ。


「ぼーっとしてたから、ちょっと心配した」

「お前と初めて会った日の事思い出してた」

「それは思い出しちゃ駄目なやつです」

「何で」

「あの頃俺、無愛想だったし」

「そうでもなかったけど」


最初は笑わなかったけど、そこまで無愛想ってわけじゃなかった。
むしろ可愛かった。


「うん、可愛かった」

「なにを一人で納得してるんですか?俺可愛くないから、カッコイイ方!」

「自分で言うな、阿呆」

「あ!やばい、始まってる!旦那さんが変な話するから!」


オレのせいかよ…
急いでテレビの電源をつけ、オレの足の間に座る恋人を抱きしめる。テレビの画面はやっぱりアニメ


「主人公、受けくさいな」

「旦那さんも、染まってきたよね。喜ばしい事だ」

「……、」


つい、言ってしまった。
ひとつだけ言うなら、お前に染まってるんだ。アニメや漫画じゃなくて。
何年も一緒にいるうちにお前に染められた。


「俺も旦那さん色に染まってるから、お互い様だ」

「…お前さ、そういう言葉は漫画から抜粋してんのか?」

「えー?秘密でーす」

「結構クる」

「下半身に?」

「……犯してやろうか」

「ぎゃー、旦那さん野蛮…!」


ふざけながら、恋人の顔にキスを落とす。くすぐったいと笑う恋人を押さえ込み、口づけた。

もっと染めてやる。その代わりにオレも染まる。
一生、色が落ちないように












―――――



旦那さんとの出会いはあっさりしてます。
今ではバカップル
きっとイチャイチャしながら、アニメ見てます。



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あきゅろす。
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