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短編




「…寒い」


やっぱり野宿は無謀だったか。
空を見上げると、星が見えた。
星座なんて詳しく知らないけど、唯一オリオン座だけ分かる。あれは見つけやすい。

ポケットから携帯電話を取り出して、電源を入れる。その瞬間、携帯電話が鳴り始めびっくりして落としそうになった。


「っうお、びっくりしたー。…彼氏さんか」


どうしようかな、出ようかな。
もしかしてずっとかけてたのか、彼氏さん
罪悪感が沸いて、通話ボタンを押す。


「…彼氏さん、ですか」

《っ馬鹿野郎》


息が乱れている彼氏さんは、やっぱりずっと探していてみたいで申し訳なくなった。


「…まだ探してるんですか」

《当たり前だろ…どこにいるんだよ》

「彼氏さん、俺可愛くない」

《は?》


唐突に意味の分からない事を話し始めた俺に彼氏さんはわけが分からんという声を出した。


「どっちかっていうとカッコイイ方。俺彼氏さんの隣歩いてて大丈夫だと思う?周りから見れば、俺より王道くんの方がお似合いカップルだったりする」

《……お前、オレの好み知ってるか?オレは可愛い奴よりカッコイイ奴の方がいいんだよ。その方がヤるとき倍楽しめる》


……彼氏さん、それはどう捉えればいいんだろうか


《お前最初無愛想っていうかクールだっただろ。そんなお前抱いたらどういう表情で、どんな声で鳴くのか考えるだけで面白くてな》

「彼氏さん妄想癖あったんだね」


ぽつりと呟くと違うと全力で否定されたけど、明らかに妄想癖だと思う。


《オレの経験上、可愛い奴はそのまんまなんだよ。抱いた時も何も変わらねぇ。でもお前は、何て言うんだろうな……あ、あれだ、あれギャップ萌え》

「…ギャップ萌え…」


彼氏さんからその言葉を聞く日が来るなんて思ってもみなかった。


《要するにお前じゃなきゃ駄目だって事だ》

「…本当に?でも王道くんとキスしてた」

《見てたのか。アイツ王道じゃないぞ》


は?だ、だって一年前はもっさりカツラと眼鏡というオタクな変装をしていて、KYで。それでも王道じゃないと?


「ど、どういう事…?」

《イケメンがいいんだとよ》

「…はい?」

《お前がいうその王道くんは、イケメン好きでカッコイイ恋人が欲しいらしくてな、ランキングの一位から順番に告白してるって言ってたぞ》

「…えー…、」


何だ、それ
そんな王道くんは初めてです。


「彼氏さんの順番だったって事ですか」

《そういう事だ。一位はアイツだろ?》

「会長さんか、二位は会長の恋人さんだしな」


あの二人の仲を裂くなんて絶対無理だろうし。三位は確か生徒会副会長だったはずだけど。


《三位は性格が無理だったらしい。それでオレに来た。でも安心しろ、ちゃんと断った》

「王道くん、諦めた?」

《ああ。恋人がいる奴にはそんなにしつこくしないらしいけど》


あれで?恋人がいる時点で諦めろよ。じゃあ次は五位の人なのか…
ご愁傷様。


「キスは…?」

《…口には当たってねぇよ、ギリギリな》


あーヤバい、彼氏さんが恋しい。会いたい。


「裏門」

《は?》

「裏門の所にいるから。…っ早く来い!!待ちくたびれた!」

《はいはい、待ってろ。すぐに行くから》


クスリと笑う彼氏さんの声を最後に電話を切った。
彼氏さん、大好きです。ずっと俺の彼氏さんでいてくれますか?



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