短編 1 一週間後にある文化祭のため、風紀の奴らと会議中だ。 ちらりと少し遠くに座る風紀副委員長と目が合う。へらりと笑う俺の恋人から視線を外し、資料を開く。 「みさ、」 隣に座る副会長、操を呼ぶ。 「何?」 「そろそろ潮時だと思わんか?」 「いや、ごめん…話がみえないんだけど」 文化祭の資料をペラペラめくりながら、操は俺を見る。 「みさは、1番は好きか?」 「は?あーまあ嫌じゃないけど、1番は恭でしょ」 恭というのが俺の名前。 「かいちょ何のお話してるの?」 書記の麻知が会話に入り込んでくる。ちっさい身長は小学生サイズ。小学生サイズは言いすぎだが。 というか、いつの間にか会議室にいる全員の視線が俺とみさに向いていた。 「まち、潮時なんだ」 「かいちょ、意味わかんないよ」 ちょうど皆揃っているし、前から言おうと思っていた事を今言おう。潮時だからな。 「みさ、会長になれ。俺は会長を辞める」 「は?」 揃いも揃って美形が皆ぽかーんって顔をしている。 「恭っ、何言ってるの!?」 風紀副委員長、恋人の岳が立ち上がり寄ってくる。 肩を掴まれ、軽く揺さぶられる。 「がく、すまん。そろそろ気合いじゃどうにもならん」 「恭、分かるように言ってよ。恭ってだいたい意味不明な事言うよね」 ため息をつく操。 意味不明な事を言っているつもりはないんだが。 「馬鹿恭、何故急に会長を辞めると言いだしたんだ」 風紀委員長の神楽が頬杖をつきながら、コーヒーを飲む。 「だから、潮時なんだ。今まで気合いで何とかしてきたが、そろそろ限界らしくてな」 「いやだからね、恭ちゃん、もっとわかりやすく説明してくれる?しかも気合いって何」 会計の光が、テーブルにぐでーっと伸びながら言う。 「ひかる、俺の気合いを舐めちゃいかんぞ」 胸を張ってそう言うと、岳が俺を抱きしめた。俺は座ったままだから、岳の体勢は辛いだろうな。 「恭、ちゃんと説明して」 ぎゅうぎゅう抱きしめてくる岳をやんわりと離し、見つめる。 「俺は行かなきゃいかん所がある。だから、会長は続けられない」 前から分かっていた事だ。出来ればここにいたいが無理だろう。 すまん、わがまま言って。 俺はそろそろ、空に行かなきゃならないみたいだからな。 . [前][次] [戻る] |