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短編




時に言葉というものは、暴力よりも人を傷付けてしまう。オレはそれをこの前、嫌というくらい感じた。

母親がいなくても、オレは幸せだったし、親父もそうだった。笑ってオレを育ててくれた。たまに怒るけど。

でもいつだったか、
夜中に母親の遺影の前で親父が泣いていたのを見てしまった。
お前が生きていれば、と悲痛な声で泣いていた。親父はオレを責めた事なんて一度もなかったし、責めるつもりもないんだって分かってた。
だけど、オレのせいなんだなって、なんとなく、ずっとそう思って生きてきた。


「…だ、けどさ…今更、オレが、死んだって、それは違うじゃん」


分かってるよ、オレが死んだら、親父は泣いてしまう。親より先に死ぬとか、オレは嫌だし、何よりひとりにしたくない。

薄暗い部屋の隅で、膝を抱えて顔を埋める。


「…痛い、」


痛いよ、
オレ、何かしたっけ?
嫌われるような事、したかな

扉が開く音が聞こえた。
…アンタは、オレをどれだけ追い詰めれば気が済むんだよ。


「カエル、」

「…どーも、会長様」

「まだいたんだ」

「すみませんね、しぶとくて。自分でもびっくりしてますよ」


会長と目を合わせないように俯いていれば、髪を掴まれ上げられた。ぶち、と髪が抜ける。


「お前、転校したいって言ったんだって?」

「…だったら、なんすか」

「させないよ」

「は…?」


アンタ、何考えてんだよ。
オレがいなくなれば、それでいいんじゃねぇのかよ。オレがいなくなる事を望んでいるのに、転校はさせない?
…それ、オレにマジで死ねって言ってんの?


「…ふざけんな、アンタ頭おかしいよ。イかれてる」

「黙れ」


バキッと頬を殴られ、鼻血が流れ出した。何度も顔を殴られて、ぐらぐら脳みそが揺れたような気がした。


「目障りなんだよ、前から」


そう言った会長はオレの腕を掴み、ベッドに投げ付けた。

前からって、なんだ…
オレがこんな状況になってんのって、名取と話した事が原因じゃない?名取と話すよりも前に、会長様を不機嫌にさせた、とか?
ああもうほんと、わけわかんね


「じっとしてなよ」

「…は、なに…、」


俯せにされ、ズボンと下着を脱がされる。
ちょっと待て、今から会長にヤられんの?冗談だろ?だって、会長ってオレの事嫌いなんだろ?馬鹿なのか?


「浅倉、」


…なんだ、名前知ってんじゃん
つか、なんで今名前呼ぶんだよ


「っや…、あ、」


萎えているオレのものを握られ、顔を枕に埋めて声を殺す。
殴ったりする時と違って、会長の手つきは優しくて混乱した。これは無理矢理犯されているんじゃないんだと、同意の上でしている行為なんだと、錯覚する。

やめてほしかった。
もっと痛くて酷くて…、優しくなんて、してほしくない。この優しさを計算してやっているなら、ほんとに最低な奴だ。痛くされるよりも、これは結構つらい。


「…きい、ちゃ…、」


希絃じゃないのに、希絃だって勘違いする。

だめだ、やめろ
アンタとはしたくない
したら、何かを、失ってしまうような気がするんだ

誰にも声が、届かない、



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