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短編




会長様に名前負け発言しちゃった翌日、昨日と同じように屋上に向かった。身体痛いけど、部屋にいたらいたでまたボコボコにされるし、屋上にいた方が安全だ。

屋上の扉を開けると、風がぶわりと駆け抜けた。そしてまたしても視界に映る、


「きいちゃん、」

「よお」

「きいちゃんが二日連続で来るとか珍しい。明日は槍が降るんじゃねぇの」


笑って希絃の横を通り過ぎようとしたら、手首を掴まれた。


「何で言わなかった」

「何を?」

「風紀の奴らに聞いた」

「あぁ、きいちゃんって風紀の人達と仲良しだったっけ」


希絃の眉間にシワが寄ってる。
怒ってんのかな…
オレの事心配して怒ってくれてるなら、すっげぇ嬉しい。


「水、お前今、」

「きいちゃん、昨日オレ言ったじゃん」


嬉しいよ、嬉しいけどね、


「気付いてほしかった。でも…希絃には一番気付いてほしくなかった。まぁ、ずっと気付かないっていうのは、無理だと思ってたけどさ」

「…水、」

「今のオレすっげぇ汚ねぇの、きいちゃんに触ってほしくない」


手首を掴む希絃の手を振り払い、少し距離を取る。不機嫌な顔をする希絃を見て、笑う。


「何で俺の所に来ないんだ。俺ならお前を助けられる」

「助けてほしい、でも助けてほしくない。言ってる事、無茶苦茶だけど、今のオレはこんな感じ」

「俺は頼りないか」

「それはない。絶対ない」


希絃が頼りないなんて事はない。むしろ頼りがいあり過ぎ。


「オレときいちゃんは、もう何でもない。だから気にしないでほしい」

「無理だ」

「希絃ッ!」


即答され、思わず叫ぶ。
何で言う事聞いてくれないんだろ


「俺は、お前を助けたい。お前の顔はこんなに傷だらけじゃねぇ」


希絃が近付き、そっとオレの腫れた顔に触れた。前と変わらない優しい手つき。


「きいちゃん、オレはただのカエルなんだ。助ける価値もない生き物で、」

「そんなん知るか」

「あのさ、きいちゃんとオレ、赤の他人だし、恋人だったっていうだけ。元々友達でもなかったし、オレが告白しなかったら、互いに名前すら知らなかったと思うんだよね」

「…だから何だ」

「だから、安達希絃とオレは無関係」


きいちゃん、オレは大丈夫だって

転校すりゃ済む話なんだから。
きいちゃんが、動く必要なんてない。


「大丈夫、まだ笑えるから」


笑えなくなったその時は、カエルが死ぬ時



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