[携帯モード] [URL送信]

短編




夕方、寮の自室に戻り、ベッドに倒れ込む。
ケツが痛い。くそっ、あのアホ名取…おもっきし痛くしやがって。


「…いてぇ…」


このまま寝たいところだが、名取のくそ野郎が中出ししたせいで、処理しなければならない。
ベッドから怠い身体を起こし、風呂場へ向かった。

二人部屋だが、同室者はオレの排除命令が出たその日から帰って来ていない。たぶん、友達の所に行ってるんだろう。クラスメイトでもなかったし、あんま話した事もないから、別にいいんだけど。

風呂から上がって、またベッドに倒れ込む。最近は何も食べる気になれない。
目を閉じると、すぐに睡魔が襲って来て眠りにつく。


―きいちゃんって呼んでいい?

―ん?ああ、好きにしろ

―ぐへへ、きいちゃん

―きめぇ


希絃はいつも優しかった。
きいちゃん、なんて可愛い顔してないけど、オレはそう呼びたかった。希絃とは友達でもなかったし、高校に入学して初めて会った。いわゆるオレの一目惚れ?うん、たぶんそう。

バシッと頬を叩かれ、一気に目が覚めた。ちくしょう、せっかく希絃の夢を見てたのに。
部屋にいたのは知らない奴ら四人で、ああ今日もか、と内心ため息をついた。
休める場所はどこにもない。部屋の鍵を閉めていたって、相手は生徒会長だ、どんな手を使ってでも開ける。


「今日も遊んでやるよ、カエル」


頼んでねぇよ。
ぐっと手を握り締め、唇を噛む。
髪を掴まれ、ずるずると引きずられリビングまで行く。
それからはまぁ、殴られるよね。
殴られて、蹴られて、これじゃいつまで経っても腫れた顔が治らねぇよ。


「カエルにはやっぱり水が必要だよなぁ」


げらげら笑うそいつらに引っ張られ、今度はトイレに連れて行かれて頭を掴まれ、便器の中に突っ込まれた。
なんて、古典的なやり方なんだ。もっと現代的なやつねぇの?
まぁ何が古典的で現代的なのか、分かんねぇけどさ。マジで、このままじゃオレ死んじゃうよ。
カエルなのに窒息死?…だっせぇ


何度も繰り返し便器の中に頭を突っ込まれ、しばらくして飽きたのかリビングに戻る。床に倒れて荒く息を吐いていたら、また殴られ蹴られ…
結局四人が帰っていったのは、日付が変わる直前だった。


「…ははは、くそいてぇし、」


渇いた笑みが漏れる。

ガチャリと扉が開く音がし、仰向けのままそちらを見る。
あーあ、これが希絃だったらどんなによかっただろうか。でも、希絃には見られたくないな、こんな姿は。汚ねぇから。


「…わざわざご苦労様ですねー、会長様」


初めてだよ、会長様と会うの。
やっぱ綺麗な顔してんなぁ、女装したら似合うだろうなとか、どうでもいい事考えてたら、手を踏まれた。

土足か、おい。さっきの奴らもそうだったけどさ、せめて靴脱げ、阿呆。


「カエルはいつ、死んでくれるのかな?」

「…もうすぐ、じゃないですか?会長様は、オレの名前を知ってますか?」

「知るわけない、お前の名前なんか知る価値もないね」


そりゃそうだ。
オレは知ってるよ、会長様の名前


「誠、」

「お前何勝手に名前呼んでんの」

「…っい、ぁ」


踏んでいた手に体重をかけられ、痛みに顔が歪む。


「っべ、つに、会長様の名前を呼んだわけじゃねぇ、ですよ。会長様は、名前と正反対の生き方してるなぁと思っただけっすよ」

「お前何が言いたいの」

「天下の会長様が名前負けしてやがんの、だっせぇ」


笑って言ってやれば、会長様は一瞬眉間にシワを寄せて、オレの腹を思いっきり蹴り飛ばした。
咳込んでいれば、会長様は冷めた目をしてオレを見下ろしていた。


「早く潰れてくれない?」

「そう思うなら、アンタが殺しに来い」


自分で手出す勇気もないくせに、馬鹿みてぇに上から目線。そんなんじゃ、アンタはいつか今のオレみたいになる。



[前][次]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!