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短編




希絃と会ってから数時間後、腹が減ったから売店に何かを買いに行くかと階段を降りていたら、背中を結構な力で押された。
そんな事されれば、もちろん落ちるわけで…
マジかよー…

頭をぶつけないようにと頭を腕で抱えたが、冷たい床にぶつかる事はなく誰かに受け止められた。


「大丈夫、ですか?」

「…あー、おー…?」


最悪だー…
何故よりによってお前なんだ。

受け止めてくれたのは名取 嵐児
生徒会長様が惚れ込んでいるイケメン新入生だ。


「わり、もう大丈夫だから…離してくんね?」


名取の身体を押して、離れようとするが肩を掴まれているから、離れられない。
つーか、何で離してくれないんだよ。おかしくね?何なの名取。


「顔手当てしません?」

「はあ?」


わかが分からん!
手当て?そんなものは必要ない。そして、何故お前が手当てとか言い出すんだよ。お前と関わりたくねぇんだけど。関わったら、もうホントにオレの命が危ない。


「…いや、いらねぇから」

「そんなに遠慮しなくていいよ」


敬語はどこにいった、お前。
眉間にシワを寄せていたら、名取はオレを担ぎ歩き出した。


「ちょっ、マジふざけんな!!降ろせって!」

「はいはい黙れー」


ムカつく…何だコイツ
イケメンなのは顔だけか。希絃とは大違いだな。

手当てするとか言いながら、名取が連れて来たのは保健室ではなく埃っぽい資料室。
床に落とされ呻く。


「いってぇなぁ!お前何なんだよ、マジ意味分かんねぇし」

「カエルが喚くな」

「ッぁぐ…!」


蹴りが顔に飛んで来て、床に倒れる。名取を睨みつければ、オレの身体に馬乗りになった。


「…お前、性格腐ってんな。外面は最高に良いのに、」

「他人が勝手にそう思ってるだけ。カエルは、俺のせいでこんなに酷い顔になってんだろ?」

「さあ?誰のせいだろうな。オレには分からねぇよ」


悪いのは、名取?それとも生徒会長様?いや、オレか?


「お前は、何がしたいわけ?」

「カエルに興味があっただけ。カエルがいつ潰れてぺちゃんこになるのか」

「もう潰れそうだから、オレへの興味捨ててくんねぇかなぁ」

「無理かなぁ」


前髪を乱暴に掴まれ顔を歪める。
まさか、名取からこういう事されるとは思ってなかったな。


「イかれてんじゃね、お前」

「黙れよ。カエルが喋んな、ゲロゲロ鳴いてりゃいいの、お前は」

「げろげろ」


ふざけて鳴いてやったら、頬を殴られた。


「マジで鳴かれたら、うぜえわ」

「サイテーだな」


ふっと笑えばまた殴られる。オレを見下ろす名取は口元を緩めて笑っていた。

なぁんだコイツも、結局は会長様と似たような奴なのか。
イかれてんだ。


「お前の顔結構タイプ」

「だから?」

「言わないと分からないほど、カエルは馬鹿じゃないだろ?」


枯れた。涙も気持ちも、何かも枯れてしまった。
カエルには水がないと。じゃなきゃ、干からびて道路に張り付いて死んでしまう
オレにとって水は、きいちゃん…かな。でももういないから


「勝手にしろよ」


オレは、


「いい返事。とびっきり痛くしてやるよ」


ただのカエル
ここには水がない。
干からびて死ぬか、轢かれて死ぬか、それとも、誰かに喰われて死ぬか

げろげろ、つらいよ



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あきゅろす。
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