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短編
5



次の日の昼休み、ぶらぶら校内を歩いていると先輩にばったり会い、ゴミ委員が集まる教室に無理矢理連れて行かれた。


「なんすか」


苛立ちを隠す事なく、先輩にぶつける。


「別れた」

「は、」

「久世と別れた」


くぜ、とは先輩の恋人の名前で、その人と別れた、とこの馬鹿な先輩は言った。
いろんな意味で泣きたくなった。

なんなの、
俺が昨日言った事無意味だったワケ?どんな思いで、俺が…


「知らねー、アンタなんか知らねーよ。勝手にしろ、俺は付き合わねぇからな。ひとりで寂しくヤってろ、しね」


好きだよ、付き合いたいよ
でも、何か違うだろーが。こんなになってもまだ好きだなんて、俺も馬鹿か。
先輩から顔をそらした瞬間、肩を掴まれ強く壁に押し付けられた。


「っい、た…」

「黙って聞いてりゃ、昨日から言いたい放題だな」

「………」


あれ、先輩ってこんなんだったっけ…?


「なぁ万北?俺はひとりでヤる趣味はないぞ?」

「だ、から…恋人と、」

「別れたって言っただろ。それに久世とは一回しかした事がない」

「…っ、」


そりゃ恋人だからするだろ。何回とか聞きたくねぇよ。


「んな事聞いてねぇよッ!!アンタが恋人と何回ヤってようが俺には関係ねぇし、」


いやほんとは気になるよ
一回って少なくないか…?どういういきさつで先輩達が付き合ってたのか知らないけどさ。


「だからもう、ほんとにやめてくださ、」


い、という前に先輩の顔が近付き唇が触れた。

…さいあく、だな。

顔を歪めて先輩を突き飛ばす。無意識に涙が零れた。


「万北、」

「……ちげーだろ、こんなの」


手の甲で涙を拭い、先輩を睨みつける。
ここで素直に頷いて、先輩と付き合い始めればいいのか?先輩は恋人に一方的に別れを告げたんじゃないのか?


「何が違う?何も間違ってない」

「アンタの考え方おかしい」


いや先輩の考え方はおかしくないだろう。好きな人が出来たから恋人と別れるというのは分かる。
分かる、けど…本当にアンタは俺の事好きなのかよ。
俺が気になると言って、今もキスをした。でもそれだけ。キスなんか本気じゃなくても出来る。


「…アンタが、俺を好きになるとは思えない」


真逆の人間
先輩は真面目で、でも俺は駄目な人間。気が合うとは思えない。
なのに好きになった俺も悪い。


「じゃあどうすればお前は信じるんだ?」

「さぁ?自分で考えろよ、頭いいんだからさ」


とにかく俺は今アンタと付き合う気はない、と言い放ち、部屋から出た。
追いかけてくる気配はない。

追いかけてきてほしいなんて、思ってねぇ
1ミリも思ってないから。



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