短編
1
恋人のいる人を好きになった。
伝えるつもりなんてこれっぽっちもなかったのに、俺の口はうっかり好き、と言ってしまった。
先輩の顔を見て後悔した。困惑したような顔、
だから慌てて、言葉を紡いだ。
「あ、いや…その、先輩に恋人がいる事は分かってるんで…すんません、忘れてください」
ガバッと頭を下げて、その場から走り去る。後ろから先輩が呼ぶ声がした。
すんません…委員会にはちゃんと行くので
俺、井口万北の恋は呆気なく終わった。
安比奈智佳先輩とは委員会が一緒だ。先輩が委員長。
通称ゴミ拾い委員会。略して、ゴミ委員。正式名は環境委員会
主な仕事内容は、校内のゴミ拾いなど。空き缶とかペットボトル回収したりする。
一応金持ち学校なのに、こういう事には金はかけない。金をかけるのは行事とかそういう時だけ。
ゴミ委員は一番不人気の委員会で、委員会のある日はほとんど誰も来ない。
週一の放課後のゴミ拾いに来る奴なんかいないよな。俺は毎週いってるけどな。
「はあぁ、もうどうすんだよ…俺の馬鹿ー」
委員会には行かないと、先輩一人になる。
だから行くけど、絶対気まずいよなぁ
言わなければよかった。
先輩は、恋人と仲良しだし、学園でも有名なカップルだ。先輩はカッコイイし、恋人も美人だ。
あぁくそったれ
もう会いたくねぇよ
「…っくそ、」
委員会も行きたくない
なんなら、最後に先輩にキスでもして、二度と会わないようにしてもいい。
「みっともねぇなァ…」
今まで真面目にやっていた授業も委員会も馬鹿みたいに思えた。
人を殴りたい衝動にかられた。
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