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短編
痛みじゃなくて



リハビリして無事に歩けるようになった俺は退院した。が、何故か芦北の部屋で生活する事になっていた。卒業するまで。

学校に戻って一週間、芦北との生活も馴染んできていたが無性に自分を傷付けたくなってきていた。
まだ芦北は仕事から帰って来ていない。棚の中からカッターを取り出し、穿いていたズボンを膝まで脱ぐ。

手首はバレるから切らない。俺はだいたい足。昔からそうしていたから、俺の足、特に太股は傷だらけだ。
カッターの刃を出し太股に当て、血が出るくらいの力で切る。


「…いたい、」


芦北は知らない。
俺がこうやって、傷付けて治っていく過程を見て、やっと生きているんだと感じている事を、知らない。芦北はただの自殺志願者だったと思っているだけ。
もう死にたいとは、思わないけど…やっぱり、これはやめられそうにない。
前までは蛾がいたから、自分でやる事はなかったけど、いないなら、自分でやるしかない。


「っく、」


深く、刺す。
じわりじわりと血が溢れ出す。
その時、ガチャと扉が開く音がして、慌ててカッターを抜く。


「…いっ、」


自分の部屋にいるから芦北が入って来なければ、大丈、夫…


「之水、いるんだろー?」


芦北の声と共に扉が開く。
目が合う。芦北の視線がだんだんと下がっていき、血が流れる太股で止まった。
無言で近寄って来た芦北に、カッターを奪われる。


「…なに、してんの?」

「……べつに」

「別にじゃねぇよ。答えろ」


カッターを床に投げ捨てた芦北は俺の手首を強く握り締めた。


「なんだよ、この足の傷。いつからだ」

「…小学生」


睨まれ、小さく呟く。


「はぁっ!?お前そんな餓鬼の頃から死にたかったのか?」

「…違う、そうじゃない。死にたいからじゃなくて…」


生きているんだと、感じたかったから。
そう言うと芦北は俺の頭を優しく撫で下ろした。


「話せ、全部」

「…気味悪いとか、」

「言わないよ」


ぽつぽつと話す。
傷付けないと生きている感じがしない事、それを親に気味悪いと言われて何度も病院に連れて行かれ、カウンセリングも受けたという事。俺の事を全部話した。


「そういえば、お前が入院してすぐに母親が来た」

「…何か、言ってたか」

「お願いしますってそれだけ言って、お前の顔も見ずに帰ったよ」


やっぱりまだ気味悪いと思われているのか。
俯いていると、芦北が両手で俺の頬を包み込んだ。


「でも、お前の事心配してる雰囲気だった」

「…嘘だ」

「今度、ちゃんと話してみろ」


コクンと頷くと、芦北は血が出ている太股に口づける。


「っおい、芦北…」

「生きてるって、感じられればいいんだろ。それなら、痛みじゃなくて、」


肩を押され、ベッドに押し倒された。


「…あ、しきた」

「快楽で、生きてるって感じる事にしようか。なぁ之水」


言葉と共に深い口づけが落ちてきた。












―――――



あれ、いちゃいちゃさせるはずが…あんまりしてない
でも之水が若干デレてる
亜鳥には仲の良い兄が一人いるとかいうどうでもいい設定があったりする



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あきゅろす。
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