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短編




誘蛾灯(ゆうがとう)
虫の光りに集まるという性質を利用して、害虫を誘い込み駆除する灯。

あの人を見ていてそう思った。
学園の害虫を駆除するために自分を使う。誘っているのかは分からないけれど。学園の害虫、いわゆる問題児と言われる生徒はその人に関わると、大抵の奴が自主退学する。
まぁその人は生徒指導という役についているから、仕方ないのかもしれない。

優しい偽物の顔に誘われて、害虫が集まる。
馬鹿な奴らばっかり。誘蛾灯であるその人を観察していると、面白い。完璧すぎる八方美人で、その事実に誰も気付いていない。
誘蛾灯は頭が良いんだろう、人の扱い方をマスターしている。

俺は蛾じゃない、だからあの灯には惹かれない。さしずめ俺は灯に集まる蛾を見て、学習能力のない生き物だと笑っている小学生って所だろう。

ただ蛾じゃなくても、誘われる奴らもいる。あの誘蛾灯は、とても綺麗だ。だからそれに憧れて惹かれる奴らもいる。

俺はどちらにも当て嵌まらない。
だから、関係ないと思っている。
誘蛾灯に目を付けられる事もないだろうと。会話した事すらない。

ただ俺は微妙な位置に今いる。
俺は蛾になりかけている。上の蛾に命令されれば、イジメもするし、誰かのモノを盗んだりする。
誰にも気付かれないように。

最悪な事に俺にはそういう才能があったらしい。虐めた相手は、俺じゃなく全然違う蛾を犯人だと思っていたし、何かを盗んでも俺は全く疑われない。一度も。
そのいらない才能を買われて、今の俺は蛾の僕と化している。
でも最近は何もかもが嫌になって抵抗しているけど、抵抗すれば蛾は俺を襲ってくる。
酷い暴力。馬鹿の一つ覚え。力任せに気にいらない相手に暴力を振るう。
それしかしない。本当に馬鹿だ。

お前らなんか早く誘蛾灯のもとへ行って駆除されればいい。じゃないと、俺もまとめて駆除されてしまう。

俺はまだ蛾になっていない。
まだ蛹のまま。もし蛾になった時は、誘蛾灯なんかの所には絶対に行かない。

自ら、死んでやる。



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あきゅろす。
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