SMILE!
騒ぎ
滝登と食堂に入ると廊下の時と比べものにならないくらいの視線と、滝登に対しての叫び声と…おれへの陰口。
視線と声。
どちらも嫌いなもの
思わず、顔をしかめるとそれに気づいた滝登は心配そうにおれの顔を覗き込んだ。
「おかーさん?だいじょうぶ?具合わるいのぉ?」
「……いや、大丈夫だ、」
滝登に心配させまいと、そう答えた。
「ほんとにぃ?」
「…ああ」
母親の事があるから滝登はこういう事には余計に敏感なんだろう。
軽く頷いてみせると、滝登は安心したように笑った。
「よかったぁ」
滝登がそう言った瞬間、食堂がざわついた。何だ、と思っていたら、声が響いた。
「滝登!」
滝登はその声にビクと肩を震わせた。この声は赤塚か、
「どこ行ってたんだよ、心配したんだからな…!」
「…ふぅ、ごめんねぇ?」
おれ達の前まで来た赤塚は、声を上げ滝登を怒った。そんな赤塚に滝登は顔を歪ませ、小さな声で謝った。
ふぅとは赤塚の事だったのか
赤塚は素直というか、思った事を口にする性格だから滝登につまらないなんて言ったんだろう。
悪い事だとは一概には言えないが、少しは考えて発言出来ないものだろうか?素直に言う事も大事だが、時には相手の事を考えて欲しい。
「滝登が無事ならいいんだ…って何で、江夏さんといるんだ?」
赤塚は、怪訝な顔でおれを見上げた。おれが紅の味方だから、赤塚はそんな顔をしているんだろう。
もっとも、おれは紅の担当ではあるが味方になったつもりはない。
「…おかーさん…、」
戸惑ったような声を出す滝登。
「お母さんって、江夏さんは滝登の母親じゃないだろ!」
「…おかーさんは、おかーさんだもん…」
「お母さん、お母さんって滝登の母親は死んだんだろ!」
赤塚の叫び声が響いた。
シンとなる食堂。
一応滝登と赤塚は友達みたいだし、滝登に母親がいない事を知っていてもおかしくはないが、わざわざ滝登の傷をえぐるような事を言わなくてもいい。
「…っ…ぅ…」
案の定、滝登は目に涙をいっぱい溜め、震えていた。
「……滝登…、」
優しく声をかけると滝登は、ぎゅうっと抱き着いてきた。
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