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SMILE!
昼ご飯



温室に行くと、すでに鈴がいた。


「八さん、遅かったですね」

「…ん、ちょっと」


水やりを始めると、鈴も手伝いますと言ってきた。最初は遠慮したけど、結局二人でするはめになった。
水の音だけが聞こえる。
静かな時間。
それを破ったのは鈴だった。


「痛、」

「…どうした?」


水を止め、鈴の元へ行く。


「バラの棘が刺さっちゃって…」


目の前にあった鈴の手を取る。
その時、鈴が焦ったような声を出していた。


「ちょっ、は、八さんっ、たいしたことないですから!そんなに痛くもないし!」


あ、最後敬語崩れた。何か嬉しい。ポケットからいつものように絆創膏を取り出して、鈴に渡す。
絆創膏貼るような傷でもないけど、一応あげとこう。


「…あげる、」

「…ありがとうございます」


鈴は絆創膏を受け取って、照れ臭そうに笑った。


「お腹すきましたね」

「…まだ、食べてないのか?」

「はい。入学式終ってすぐ来たんで」

「……一緒に食べる、か?」


自分からこんな風に誘った事なんて、なかった。
たぶん相手が、鈴だからだ。
誘った後に、ちょっと後悔した。おれみたいな奴に誘われたら、鈴は嫌なんじゃないかと。


「……す、鈴」

「いいんですか?」

「…え?」


鈴を見ると、嬉しそうな顔でおれを見ていた。


「俺も八さんと一緒に食べたいです。…いいですか?」


コクンと頷くと鈴は笑って、ありがとうございますと言った。

途中で止まっていた水やりを再開して、すぐに終わらせ、鈴と一緒におれの家に向かう。


「あ、そういえば、八さんから貰ったバラあと少しで咲きそうですよ」


隣を歩いている鈴が突然そう言った。


「昨日よりも大きく育ってて、見てると面白いです。花も生きてるんだなあって」


鈴が花を好きになってくれてよかった。嬉しい。


「八さんも花好きですよね」

「……ああ。見てると、癒されるから、」

「…、そういう八さんに癒されます」

「…何か言ったか?」


鈴が何か言ったような気がしたけど、気のせいか?


「いえ、何でもないですよ」

「…そうか」


花は好き。
枯れてしまう時は、寂しくなるけど、ちゃんと世話をすれば、長く、長く生きてくれる。
どんな花でも、一生懸命に生きている。



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あきゅろす。
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