SMILE! 4 「最近、依鈴よくどこか行くんで、今日菊と二人で尾行してきたんですよねー」 尾行… ずれた赤い眼鏡を上げながら、咲は言う。 「温室に来てたなんて予想外だったなあ」 「………」 独り言の様に話す咲に、おれは黙って話を聞く。 「八さん、終わりましたよ」 「……鈴」 鈴が菊を連れて来た。 温室は広くて、一人での水やりは大変だ。でも最近は、鈴が手伝ってくれるおかげで楽になった。 「依鈴、咲、そろそろ食堂行かないと」 菊が携帯電話で時間を確認して、二人に伝える。 「えー、もうそんな時間?」 「うん」 咲が菊にぶーぶー文句を言っている。そんな二人を鈴は無視し、おれの目の前に立ち、頭を撫でてきた。 「……す、ず?」 「また、来ます」 「…ん」 頷いて返事をすると、頭を撫でていた鈴の手がスルリと頬を撫でてから、離れた。 それにビクリと震えると、鈴は笑った。 「……笑う、な」 「すみません」 それでも鈴はまだ笑っていて、滝矢兄弟と温室を出る時もまだ、笑っていた。 . [まえ][つぎ] [戻る] |