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SMILE!
2



「…っな、んで自分から、傷つくような、こと…するんだ…っ」


笑っているけど、流星だって泣きそうな顔してる。


「……」

「…もう悪役に、ならなくて、いいんじゃ、ないのか」


流星と隠岐は自分から悪役になる。それは根が優しいからなんだろうけど。
隠岐には青柳達がいる、仲間がいる。だけど流星はひとり。


「…今更…、優しくは、なれないよ。僕は、ずっとこうだから」

「……なれる。流星はおれを助けてくれた、だから」

「っそれは!八くんだったからだよ!」

「…でも、おれを助けてくれるんだから、他の人も助けられる」


流星なら出来る、そう言えば流星に抱きしめられた。


「他の人じゃ、駄目なんだよ…八くんだから好きになったんだ」

「……そ、れは…おれも同じ」


隠岐だから好きになったんだ。


「…晃雅くんが、好き…?」

「……ああ、隠岐が好きだ」

「失敗したなぁ…」


耳元でくすりと笑う流星の顔は見えない。たぶんまだ泣きそうな顔をしているんじゃないだろうか。


「傍観者なんて最初からやめればよかった…ずっと八くんと一緒にいればよかった」

「…流、星…」

「……ごめんね、好きになって」


なんで、謝るんだ。
流星は謝る事なんて何ひとつしていない。


「…謝らないで、くれ」

「うん、でもごめん。…ムカつくけど僕が入る隙間なさそうだし」


友達でいてくれる?と流星はおれと目を合わせて言った。
その目には涙が浮かんでいた。


「…当たり前だ」


おれにはそれしか言えない。
ありがとうと言っても、ごめんと言っても流星を更に傷付けてしまう気がした。





―side.流星



友達宣言した後、すぐに八くんの家を出た。じゃなきゃ、醜い自分が出て来そうだった。
八くんに叩かれていなければ、あのまま無理矢理やっていたと思うし…
我ながら最低だと思う。


「…あ、」


最悪のタイミングで、前から晃雅くんが歩いて来ていた。
ツイてない。


「どーも。…八くんに会いに行くんでしょ?」

「お前には関係ない」

「関係なくないよ。さっき八くんにフラれちゃってさ、無理矢理キスしちゃった」


ほら、やっぱり僕は優しくなんてなれないよ。余計な事ばかり言ってしまう。


「あ?」


眉間にシワを寄せる晃雅くんを睨む。


「…ホントムカつく。傷付けてばっかの君が何で八くんの隣に立てるわけ?」

「人の事言えねえだろ」

「そうだね、でもムカつくもんはムカつく」


晃雅くんに近付き、思い切り殴った。フラれた事を八つ当たりするように。


「…何で、避けないの?」


晃雅くんなら簡単に避けれるはずなのに。


「馬鹿にしてんの?惨めだって思って、殴らせてくれた?同情しないでよ」

「してねえよ、クソ猫が。二度とアイツに手出すな」


仕返しにと言わんばかりに、本気で殴られた。最悪な事に八くんに叩かれた所と同じ場所。


「…いったいなぁ、もう」


殴られた所もそうだけど、胸が張り裂けそうなくらい痛い。


「…八くんの事泣かせないでよ。泣かせたら、僕が奪うから…」

「誰にもやらねえよ」


笑って言ってみせる晃雅くんが、ホントにムカついた。何でそんな余裕なんだ、と。
唇を噛み締めていると、晃雅くんが目を細め呟いた。


「佐々、悪いな。あの馬鹿は俺のだ」


それだけ言って晃雅くんは八くんの家の方へ行ってしまった。


「っバーカ!!!」


小さくなっていく晃雅くんの背中に向かってそう叫んだ。
バカとか子供か、でもその言葉しか思いつかなかった。
我慢していた涙が溢れた。


「…むかつく」


みっともないけど、涙は止まってくれない。
泣くほど、僕は八くんが好きだったのか。フラれて泣くなんて、僕らしくない。明日になったら、友達に戻らなきゃいけないのに。


「っ、八くんとは、友達だ」


友達でいなきゃ駄目なんだよ
自分に言い聞かせた。
そういえば晃雅くんに初めて佐々って呼ばれたなぁ、なんて…どうでもいい事を考えながら、涙を拭った。



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あきゅろす。
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