[通常モード] [URL送信]

SMILE!
気付け



桐也先生と真樹先生にも謝りに行ってから、家に帰った。
部屋の中は綺麗に片付けられていて、アルバムはテーブルに置かれていた。ベッドに置いたままだった携帯電話で六にメールすれば、すぐ行くと返事が返ってきた。

六が来るまで暇でシマと遊ぶ。
シマと遊び始めて15分経った頃に六が来た。


「おはよ八、」

「…おはよう。昨日ごめん」

「許さん」


その言葉にぽかんとしていると、冗談と六は笑う。六に促されイスに座ると、反対側に六も座る。


「寒い中走り回ったんだぞ」

「…ごめん」

「まあ、いいけどさ。もう大丈夫なのか?」

「…ああ、隠岐のおかげで」


昨日隠岐と会わなかったら、おれは今ここにはいないだろう。


「あーっ、もう!!」


急に叫んだ六に驚く。がしがしと自分の頭を乱暴にかく六。


「昨日、俺が見つければよかった、マジで」

「…何で?」

「八がもう笑ってるから。笑ってるって事は、ホントに大丈夫って事だろ。それは、隠岐がいたからだよな」


俺が八を救いたかった、真剣な顔でそう言われた。その思いだけで、おれは嬉しい。


「隠岐に何言われた?」

「…何って、」


お前を愛してやるよ
誰よりも江夏八を愛してやる
隠岐に言われた言葉を思い出し、顔が熱くなる。あの時は親の事でいっぱいいっぱいだったけど、今思えばすごく恥ずかしい。


「…八顔赤いぞー」

「……っえ、いや、」


昨日の事を思い出す程、顔が熱くなり、ドクリと胸が動く。


「…見た事ない顔してる」

「……え?」

「もう八とちゅー出来ねぇじゃんか!」

「…は?」

「答え、出てるんじゃねぇの」


答え?何の…?どういうこと?


「俺は八が幸せならそれでいい」


微笑む六に戸惑う。


「…っちょ、ちょっと待って。答えって、」


おれはまだわからないのに、何で六がわかっているんだ。


「俺は今日の八見て確信した。すぐに立ち直れるくらい、そいつの言葉は八にとって大きい…そうだろ?」


もし、他の人だったら?
捨ててくれてありがとうって、笑ってやれよ
そんな言葉、きっと…いや絶対、隠岐しか言わない。その言葉は確かに大きい。


「あんまり話した事無いし、よく知らないけど、隠岐はお前を見る時すごく優しい目してんだよ」

「……」

「俺とか理事長とか、他の奴と、違う感情なんじゃないのか、隠岐に対しては」


違う感情?
それはどういう感情…


「まだ分からんって顔してんな。はい質問、今誰の事考えてる?」

「……隠岐、」


隠岐の話してるから、そりゃあ隠岐の事を考えている。


「それが答えなんだよ」


ビシッと指を差され、その手をやんわりと払う。


「ホントはさ、こういうのって自分で気付くべきなんだろうけど、もうすぐ冬休みで、明けたらあっという間に卒業式だろ?時間が無いんだよ、八」


時間が無いのは分かってる。
隠岐が答え、それって…


「……おれ…、いや、でも、」


告白してくれた他の人と隠岐と、何が違う?考えた、出会ってから今までを。
一番最初、隠岐は喧嘩していた。それから、おれは紅の担当になって、隠岐は何度も助けてくれた。
楢木先生の時も。
あの時、おれは…


「八?」


顔を両手で押さえる。
抱かれたんだ、隠岐に。嫌なんかじゃなくて、おれは隠岐ならいいと言った。それは…、隠岐だったから。



[まえ][つぎ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!