SMILE!
両親
理事長室を後にし、エレベーターに乗り込む。エレベーターの壁に背を預ける。
どうすれば、いいんだ。
悩んでいると、エレベーターが止まり扉が開く。乗って来たのは加賀谷と但馬だった。
「あれー、ポチやん。何してるん?」
「……呼ばれ、て」
「理事長にか?」
加賀谷の言葉に頷く。
「……二人は、どこ行くんだ?」
「食堂。ポチも一緒に行かへんかー?」
「……いや、ちょっと用事があるから。悪い…また今度、誘ってくれ」
用事という用事はないけど、六に会いに行こうと思う。六も昼休みだから少しくらいなら話せるはずだし…
「そうなん?じゃあ次は絶対一緒に行こうなぁ」
頷くと、加賀谷に二の腕を掴まれた。
「……加賀谷…?」
「お前、何かあったのか」
「……何、で?」
ドキリとした。
おれの周りの人達はどうしてこうも勘がいいんだろうか。
「なんとなーく。そんな感じの顔してるからな」
「うーん、確かに変な顔やな」
変な顔って…
「で、何があったんだ?」
「……そ、れは…」
「オレ達には言えない話か」
隠すような事じゃないよな。
それにもう皆、おれの事知っているわけだし。首を振って、加賀谷と但馬に伝える。
「……親の話、だった」
「…ポチを、捨てたっていう親の話?」
「おい、茉」
「あ、ごめんなぁポチ」
「……いや、本当の事だから大丈夫だ」
こんな事を言われても、多少は平気になった。これなら、いつか本当に笑い話に出来るかもしれないと、少し思っている。
「それで、親の話ってなんだったんだよ」
一階につき、エレベーターの扉が開く。エレベーターから下り、廊下から窓の外を見ながら言う。
「……両親とも、死んでるって」
二人を振り返ると、ぽかんとしていた。
イケメンが阿呆面、
酷い顔だな。
くすりと笑うと、加賀谷に両肩を掴まれた。
「…何で笑ってられる」
「……加賀谷達が、変な顔してるから」
「お前馬鹿か!捨てられたとしても、親にはかわりない。さっき知ったんだろ?なのに、笑ってんじゃねぇよ」
親が死んでいる。確かに笑えない話だ。だけど、おれは
「…今、どういう表情、すればいいのか…わからないんだ」
目に涙を浮かべ、笑う。
「……泣けばいい、のか?でも、そんな感情すらわかないんだ」
「…ポチ」
肩を掴む加賀谷の手をやんわりと離し、二人に背を向ける。
「……悪い」
それだけ言って、歩き出す。
加賀谷に呼び止められたが、無視した。
「…ポチ泣かせた」
「…うるせぇよ」
そんな二人の会話などおれに届くはずもなく、職員室にいるだろう六を求め歩いた。
六はおれの欲しい言葉をくれるはずだから。駄目だな、おれは六に頼ってばかりだ。
頼るのやめなきゃいけないな…
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