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SMILE!
2



ああもう聞けないんだ。
おれを捨てた理由も、愛してくれていたのかも。少しでも…いつか会えるなんて期待していたおれが馬鹿だったんだろうか。


「最後まで聞くんだ」


強い口調で言われ、良仁さんを見れば、真剣な…でもどこか悲しそうな顔をしていた。
どうして良仁さんが、そんな顔するんだ。


「…や、だ…嫌…、聞きたく、ない…っ良仁、さ…」

「駄目だ。乗り越えるんだろう?ちゃんと聞くんだ」


ぐしゃりと顔を歪めれば、大丈夫だと頬を両手で包み込まれた。


「明日、お葬式があるそうだ。親戚の人も八君の事情は分かっている。だから、行くかどうかは八君が決めるんだ」


弱く首を振る。
おれが行って何になる…?あの日から会っていないのに。
無言でただ首を振る。
行きたくない、そう良仁さんに伝えるように。


「八君、これだけは言うけど…明日会わなかったら、二度と会えないよ。明日が母親を…両親を知る最後のチャンスなんだよ」

「………、」

「ゆっくり考えなさい。まだ明日まで時間はあるから。もし行くと決めたなら朝八時ここにおいで」

「…良仁さん、は…」

「私は八君が行かなくても、行くつもりだよ。八君のお母さんだからね」


お母さん、
おれを産んでくれた人


「…っお、れ…」

「分かってるよ」


良仁さんに強く抱きしめられる。
そっと背中を摩られ、良仁さんの背中に手を回す。


「急にこんな話をしたから、混乱してるんだよね。分かってるから、大丈夫」


大丈夫、大丈夫と優しく囁かれ、良仁さんにしがみつく。
怖い、
記憶の中じゃ、両親はあの時で時間が止まっている。もし、明日行って母親の顔を見てしまったら…おれはおかしくなってしまいそうだ。


「…皆に自分の事、話したんだろう?」

「……は、い」

「せっかく、前に進めると思ったのにね…」


また目の前に大きな壁
固くて冷たい、
きっと今回はそう簡単に前には進めない。


「でも大丈夫だよ、八君は強くなったから」


最後、
明日が親を知る最後のチャンス



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