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SMILE!
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すごく嫌な予感がした。
何故だかは分からない、だけど良仁さんの声が不安げだった。
おれの気のせいなら、それでいいんだが…


「……話し、ですか…」

《ああ。直接話したいから、今から理事長室まで来てくれる?》

「……はい、わかりました」

《じゃあ待ってるからね》


ブツリと通話の切れた携帯電話をポケットに戻し、俯く。
…話しって、なんだ?何かしてしまっただろうか。良仁さんを困らせるような事を。


「八さん?大丈夫ですか?」

「……え?…ああ、悪い」

「電話、何だったんですか?」

「……話しが、あるから…今から来てほしい、って」

「そう、ですか。あ、俺風紀に戻るんで途中まで一緒に行きましょうか」


鈴の言葉が半分、耳をすり抜けていく。一緒に行こうという事は聞こえていたので、頷くと鈴に手を取られた。


「行きますよ?」

「……ああ、」


鈴に引っ張られる形で、温室を出た。
頭の中は良仁さんの事ばかり。
今までの事を、思い返す。
気付いてないだけで、何か良仁さんにしてしまったんじゃないか、と。
鈴とエレベーターに乗り込む。


「何の話なんでしょうね」

「……わからない」


俯くと鈴の手が伸び、頬を包み込んだ。


「不安ですか」

「……おれ、何かしたかもしれないって…良仁さんが怒るような、こと…」


悪い方に考えてしまう。
こんなんじゃ、駄目なのに。


「理事長って、そんな簡単に怒る人じゃないですよね」


分かっている。良仁さんは滅多に怒らない。すごく優しい人。
だから不安になる、良仁さんが言い淀むほどの話…


「大丈夫ですよ」

「……鈴、」

「もし、怒られたら俺が慰めてあげますよ」


顔を上げて鈴と目を合わせると、鈴は口元を緩めていた。


「……ああ、ありがとう。その時は頼む」

「はい、喜んで」


そこでちょうど風紀の部屋と生徒会室がある階に着き、鈴がエレベーターから降りる。


「じゃあ、また」

「…ああ」


扉が閉まり、エレベーターが上がる。理事長は生徒会室と風紀室の上ですぐに目的の階へと着いた。
エレベーターから降り、長い廊下を歩く。大きな理事長室の扉の前で、一旦足を止めてゆっくり息を吐く。


「…よし、」


行こう。
扉をノックすると、中から良仁さんの声がした。それを聞いてから扉を開けた。



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あきゅろす。
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