SMILE!
呼び出し
誕生日から、一週間経った。
一歳年を取ったからといって、何かが変わったわけじゃない。だけど、内面は変われた。
「八さん、こっち水やり終わりました」
「…ああ、ありがとう」
前のように温室には鈴が手伝いに来てくれる。
「もうすぐ収穫出来そうですね」
植えたトマトが赤く色付き、そろそろ収穫時だ。トマトは比較的簡単に育てる事が出来た。水をやるだけで、綺麗に育ってくれる。
「……そうだな、美味しいといいんだが…」
「絶対美味しいですよ。八さん大事に育ててたから」
「…鈴にも、あげるな」
「はい。楽しみにしてます」
笑いかけられ微笑み返せば、抱きしめられた。とても優しく。
「……鈴?」
「やっぱり、八さんは笑ってる方がいいですよ。すごく、綺麗に笑うから」
笑い方に綺麗とか、あるんだろうか。疑問に思ったけど、そう言われ悪い気分ではなかった。
「…ありがとう」
最近よく、ありがとうと言う気がする。前は謝ってばっかりだったけど。
「八さん、」
「……なんだ?」
鈴は少し距離を取り、おれの手を握る。
「今度、二人でどこか行きませんか?」
「……どこに?」
「どこか八さんが行きたい所に」
「……植物園、とか…行ってみたい」
そう言った後に、恥ずかしくなった。植物園など、鈴は興味ないだろうし…
「いいですよ」
「……ほんと、か?」
「はい」
ありがとうと笑うと、頬にキスされた。顔を赤くして慌ていると、再び抱きしめられる。
鈴の腕の中でじっとしていると胸ポケットに入れていた携帯電話が鳴った。
鈴に断りを入れ、ポケットから携帯電話を取り出す。画面には良仁さんの名前が表示されていた。
どうしたんだろう?こんな時間に電話してくるなんて珍しい。
何かあったんだろうか
「誰からですか?」
「……理事長」
「早く出た方がいいんじゃないですか」
「…ああ。ちょっと、ごめん」
鈴に背中を向け、通話ボタンを押した。
「…もし、もし」
《…八君?今大丈夫だった?》
「……はい、大丈夫です。何か、あったんですか…?」
そう聞くと、良仁さんの声が途切れる。
「……良、仁さん…?」
今まで、こんな事なかった。
心配になって名前を呼ぶと声が届く。
《…八君に、話したい事があるんだ》
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