SMILE!
寝顔 side.六
全員で簡単な八の誕生日パーティーをした。嬉しそうな八を見て、俺も嬉しくなった。
繋がっている気がするんだ、俺と八は。八が泣くと俺も泣きたくなるし、嬉しそうにすると俺も嬉しい。
よかったと思う、八が話せて。
まだ親の存在は八の中にあるんだろうけど、これで乗り越えられたんじゃないかと思う。
隣に座る八を見ると、机に顔を伏せていた。
「…八?」
「寝てるみたいだよ」
八の左側に座るしょうくん?が、俺に向かって言う。
「泣き疲れたんだろうな」
腕を枕にして、寝ている八の寝顔が見える。
顔にかかる髪を軽く払う。目元が赤く腫れていた。
「てゆーかさ、省吾くんは何で八くんと一緒だったの」
「…またその話?あんまり嫉妬してると、キモいよ」
佐々の言葉にしょうくんは顔をしかめる。いい加減、しょうくんの本名を知りたい。
俺の隣の金武先生に聞くと、しょうくんの本名は大神省吾だと教えてくれた。
「省吾くん、喧嘩売ってんの?」
「売ってるつもりはないけど。ただ僕は本当の事を言っただけ」
うん、大神に一票。
「だいたい江夏サンが、一緒にいてって言ってきたんだし。僕に文句言わないでよ」
嫌だったんだろうな、一人でいるのは。
小さく寝息を立てて眠る八をじっと見ていると、視界の端で誰かが立ち上がった。そいつは確か隠岐晃雅という奴。
金武先生と橘先生に聞いた話によると、紅とかいう組織のリーダーだったらしく、八といろいろあったらしい。その話の時、若干はぐらかされたが。
その話を八が俺に話さないという事は、八の中ではもう終わった事なんだろう。
だから、俺がここに来る前の事は気にしない。
気にしてたらキリないし。
立ち上がった隠岐晃雅を目で追うと、こっちに近付いて来ていた。
八の後ろに立った隠岐は、八を軽々と抱き上げる。
「隠岐どこに連れてく気だ」
加賀谷が聞くと隠岐はぐっすりと眠る八を抱え直して言う。
「風邪引くだろ」
それだけ言って隠岐は八を抱え、食堂を出て行く。
「ちょっと晃雅くん!八くんに手出さないでよ…!」
その佐々の叫びが隠岐に届いたかどうかは、分からなかった。
バタンと音を立てて閉まった扉を見る。
隠岐も八を好きって事か。アイツの八を見る目が、そういう目だった。誰が本気で八を好きなのか、把握出来ない。
八はいろんな意味で人を引き付けてしまう。
悪い方にも、良い方にも。
極端だが、八は嫌われるか、好かれるかのどっちかだと俺は思っている。
そういう性格をしている。
まあ、今は変わってきたから違うと思うが。
昔はそうだった。八の見た目、話し方、性格にムカついて嫌うか、逆にそれが気になって構う。その二択。俺は後者だ。
ついさっき八は、いなくなったら生きていけないくらい大切な人だと言ってくれた。
純粋に嬉しかった。だけどそれを聞いて、親友という位置から抜け出せないような気がした。
やっぱり俺は八の大切な、親友でいるしかないんじゃないかと、ほんの少し思ってしまった。
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