SMILE!
4
「…みんな、が…親の、事…っ知って、何か、変わったら、どうしようって…怖かったっ」
だから話すのを躊躇った、と言えば流星は小さな声で謝った。
何も知らないのにごめん、と。
それに首を振る。
「……乗り越え、たかった…から、流星が…聞いて、くれて…よかった」
聞いてくれなければ、答える事はなかったし、一生乗り越えられなかっただろう。
まだ完璧に乗り越えたとは言えないけど、心の中は前よりもスッキリとしていた。
「…ここに、来て…よかった」
そう思えた。辛い事もあったし、嫌な事もあった。
だけど、よかった。
「…み、んなに…会えて、よかった」
声は震えてないだろうか?
ちゃんと伝わっているだろうか?
止まらない涙を流しながら、笑った。
「…今、おれは…幸せだ」
笑えているだろうか?自分じゃ分からない。
「……むつ、おれ…笑えてる?」
何故か泣きそうな顔をしている六は、おれに近付いて来て、頭を撫でた。
「っ最高の笑顔だ」
「……よ、かった…」
笑えていた。よかった。
安心したのか、ふと身体の力が一気に抜けておれは床に座り込む。
目の前に六がしゃがみ、おれの頬に触れる。
「八、25歳の誕生日おめでとう」
「……っ覚えて、たの、か?」
「いや、忘れてた。ついさっき思い出した…ごめんな?」
「……ううん…ありが、とう」
思い出してくれただけで嬉しい。
微笑むとぎゅっと六に強く抱きしめられた。
涙で歪んだ視界に皆が見えた。
流星が八くん今日誕生日なの、と驚いていて、じゃあパーティーしようと、そんな話になっていた。
ありがとう…、本当に幸せだ。
イスに座るよう促され、おとなしく従う。
泣き腫らした顔を見られないように乱れていた髪を整え、前髪で顔を隠す。
右に六が座り、左には何故か大神が座っていた。今日はすごく大神に助けてもらった。
いつの間にかテーブルに、たくさんの料理が運ばれており、おれの前には手の平程のケーキが置かれていた。
「……ケーキ、」
「誕生日なんだろ?それしか用意出来なかったけど」
六の隣に座る桐也先生に話し掛けられ、頷く。ありがとうございますと言えば、桐也先生は笑った。
皆に、誕生日おめでとう
そう言われ微笑む。
今年の誕生日が今までで一番幸せかもしれない。こんな大勢の人に祝ってもらうのは初めてだから。
用意されたケーキを一口食べる。
甘いケーキ
また涙が出そうになった。
今日一日で、一生分くらい泣いただろう。
近いうちに、また今日と比べものにならない程泣いてしまう事を、今のおれは想像すらしていなかった。
こんなに泣くのは本当に最後だと思っていた。
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