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SMILE!
3



涙を流しながら加賀谷を見れば、加賀谷はじっとおれを見て話し出す。


「前より話すようになった。笑うようになった。冗談だって、言うだろ。カエルに大声出してビビるし…何より、今泣いてまで自分の事を話してる。充分すぎる程、変わったんじゃねぇの」


それを聞いて、ぶわりと涙が溢れ出し頬を流れていく。
変われていたのか、おれは。こうやって、今皆の前にいる事が変われた証拠なのか。


「…っふ、ぅ……っご、め」

「…何で八くんが謝るの」


何でって、待たせているから。
それだけじゃないけれど。自分の事を話すのが遅くなったし、こんな拙く話すおれの話を聞いてくれている。


「…っ…話す、の…へた、で、」

「誰も気にしてないって。たまにウザって思うくらいで」

「省吾くん、それフォローしてるの?」

「してるけど」


それが大神なりの優しさなんだろう。笑いたくても、口から出るのは嗚咽ばかり。
それにまだ謝らなければ、いけない事がある。


「…ま、たせて…っごめ、ん…」

「…それは、八くんに告白した人に謝ってるの?」


流星の言葉に頷く。腕で雑に目を擦り、口を開く。


「……好き、って…いう、感情が…おれは、よくわから、なくて」


皆の事は好きだけど、それが恋愛感情になると分からなくなる。
ずっとその人の事を考えて、一緒にいたいと思う人なら、六だってそうだし、良仁さんもそう。


「………正直、好きだ、って…言われて、困ったし…なんで、おれなんだろうって、思ってる」


江夏八だから、と皆言うけど、おれは何も持っていない、何の取り柄もない人間だ。なのに、おれを好きになってくれた。
待つのは辛い事だと、おれは分かっているのに。いつまで待たせるつもりなんだ、おれは。


「…ごめっ…、ごめん、」


ぽたり、ぽたり
おれの涙で床が濡れる。


「はちゅ、待つって嫌な事ばかりじゃないと思うよー?、恋愛に関してはね」

「……っ…え…?」

「そりゃあ、早く答えが知りたいとは思うかもしれないけどー、はちゅに待たされてる奴らは、ドキドキソワソワしてんの。それはさー、辛い気持ちとかじゃなくて、期待とかなんだよ」


恋愛してる時、相手を待つのはきっと楽しい事でもあるんじゃないかなー?
青柳はにこりと笑って言う。
思わず一番近くにいた流星を見ると、流星は微笑み頷いてくれた。


「今僕はドキドキソワソワしながら、八くんを待ってるよ。でもそれは辛くはないよ」


加賀谷に言われた通り、おれは恋愛初心者だから、待つのが辛くないっていう、その気持ちが分かるのは随分先になるだろう。


「…っ…もう、少しだけ…待って、て…ほし、い」


好きだと言ってくれた人達を順番に見ていく。
真樹先生、鈴、矢沼、六、流星、隠岐、木野
皆の目が優しい。その目が待つと言っているようで、おれはぐしゃぐしゃに顔を歪めて涙を流した。


「っぅ…く…、ふ…ぁ、あり、が、と…」


おれの周りの人達は、なんでこんなにも…優しい人達ばかりなんだろう。
いつの間に、おれの周りはこんな賑やかになったんだろうか
でもまだ皆と接する事が怖いと思う事がある、


「……っまだ、皆の…接し方も、分かって、ないし…、怖いと思う事も、ある…」


やっぱり親の影がちらついてしまうから、どうしようもない時がある。



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あきゅろす。
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